一緒に帰ろう 2 ページ7
「そう!ピアスしてたら耳の傷も少しは目立たなくなるでしょ?耳を出した髪型も出来るし!」
ニカッと笑う兄ちゃんにじんわりと胸が温かくなった。
「つけてみてよ、似合うと思うよ。」
千さんの言葉に頷いて鏡を見ながらピアスをつける。
矢島さんが髪の毛をアップに結い直してくれた。
大きめのピアスだから、傷はほとんど目立たなくなった。
「…うん、やっぱり似合ってる。」
「うんうん!めっちゃ可愛い!」
『…えへへ……ありがとう!』
口にはしないけど、きっと高かったんだろうな。
お金、あんまりないみたいなのに。
二人の気持ちが嬉しくて、自然と頬がほころんだ。
すると急に兄ちゃんが泣き出しそうな表情になった後、思いっきり笑ってまた抱きしめられた。
千さんも交じって抱きしめてくる。
ちょっと苦しかったけど、温かくて安心した。
「…さ、じゃあ帰ろっか!」
『…っうん!』
帰る。
初めて行く家だけど、私の帰る場所になる家に帰る。
不思議な気持ちだったけど、ワクワクしていることに変わりはなかった。
兄ちゃんと千さんと一緒に昼下がりの道を歩く。
「…さ、着いたよ。」
千さんが「あそこの部屋だよ。」と指差す。
ドアを開けるとギィ…と音がする。
古いアパートだから結構ボロい所もあった。
「…ごめんな、まだ貧乏だからいろいろ不便かもだけど。もう少し売れ始めたらめちゃくちゃいいマンションに住む予定だから!」
『ううん、平気!面白い!』
「え、面白い?」
眉を下げて言う兄ちゃんに笑って返したら、さらに眉を下げて困った顔をする。
でも実際ワクワクとドキドキが止まらなかった。
踏んだらキィキィ音がする床や頑張らないと開かないくらい固い押し入れとか、本来なら怖いと思うのかもしれないけど、私にとっては全部が新鮮で楽しかった。
でも困ったことが二つ。
『…ここって千さんと兄ちゃんの二人暮らしなんだよね?』
「昨日まではね。でも今日からAも入れて三人暮らしだよ!」
『…えっと、でもあと二人くらいいるよ?』
「え?誰がいるの?…泥棒!?」
玄関で荷物を片付けてた兄ちゃんがダダッと部屋の中に駆けてきた。
と同時に守るように抱えられる。
「……誰もいないけど…?」
『…あぁ……そっか。』
見えないのか。
ならあの人たちって幽霊なんだ。
病院でも何回か見たけど、血とか出てない普通の姿だと分かんないもんなんだな。
…あ、でもあの人は首に縄が巻かれたままだ。
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時