遭遇 3 ページ40
私の手のひらを見て、袋の跡が付いてしまったところをそっと撫でられる。
くすぐったかったからそのまま兄ちゃんの手を握ると、驚いた表情をした後、嬉しそうに笑って握り返してくれた。
「こんなに買ったの?呼んでくれれば迎えに行ったのに。」
『ううん、本当はこんなに重くなるはずなかったんだけど…。わけは後で話すよ。
千さんが待ちきれなさそうだから迎えに来たの!』
「え!ユキが?ホントに!?」
『ふふっ、うん!「お肉買ってきて」って言ったのも千さんだよ。』
「3人揃ってご飯って久しぶりだもんね。じゃあ今日はめちゃくちゃハッピーな日だ!!」
嬉しそうに笑う兄ちゃんにつられて私も笑う。
…うん、めちゃくちゃハッピー!
「よし!早く帰ってユキに肉料理いっぱい作ってもらお!」
私の手を引っ張ってグイグイ歩く大きな背中を駆け足でついて行く。
一日中バイトできっと疲れているだろうに、その足取りは軽く楽しそう。
突然、その足がピタと止まる。
『わぶっ!?』
勢いを殺せなかった私はそのまま兄ちゃんの背中にぶつかってしまう。
握られた手に力がこもる。
『…兄ちゃん?』
不思議に思って見上げると、怖い顔をしてじっと前を睨んでいる。
視線の先には、道路脇に止められた高そうな黒い車。
それを見つけた瞬間、ビクッと全身が強張った。
車のナンバーは知らない番号。
車種も違うし見たことない。
…でも、黒瀬の乗っていた車に似ている。
もし、関係者だったら?
車を変えたのなら?
…やっぱり、私を探して…?
ドアが開けられて誰かが出てくる。
私を隠すように兄ちゃんが少し前に出た。
…現れたのは、黒瀬ではなかった。
眼鏡をかけた怖そうな男の人。
記憶に無い顔だから会ったことはないと思う。
…でも、絶対怖い人だと――
「えっ!?八乙女社長!??」
『……へ?』
怖い人だと思う、って頭の中で考えてたけど張り詰めていた緊張感を破るような兄ちゃんの言葉に拍子抜けした声が出た。
兄ちゃんの肩から少しだけ力が抜ける。
…知り合いなんだろうか?
それなら業界の人なんだよね?
…でも社長って。
「……お前は、……Re:valeの百か。なぜこんなところにいる。」
「バイト帰りですよ!若手はお給料少ないですからね。社長の方こそなんでこんなとこにいるんですか?」
ニコニコ笑って言いつつも兄ちゃんは私を背後に隠したまま。
「今はお前に用はない。…そのうち必要になるだろうが。」
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時