願望に似た… 2 【百side】 ページ31
もうこれ以上苦しまないで。
もっとオレを頼って。
もっとオレを困らせて。
Aが笑っていられるなら、オレはどんなことだってする。
……オレ、ちゃんと兄ちゃん出来てるのかな?
風呂の蛇口を捻ってお湯が溜まっていくのを確認してからキッチンに戻ると、ユキが小鍋をコンロにかけている。
「ホットミルク。モモも飲む?」
「…うん、飲みたい!」
「分かった、待ってて。」とユキは3人分のマグカップを並べて追加の牛乳を冷蔵庫から取り出した。
Aは部屋でイヤホンで音楽を聴いている。
「新曲だよ、ほら昨日モモにも聴いてもらったやつ。もう少し調節してもいいかなと思って、Aにも聴いてもらってる。」
ユキの言葉に頷いてから、そっとAの隣に腰を下ろした。
目を閉じて曲を聴いていたAはオレを見ると、柔く微笑んで片方のイヤホンを渡してくる。
受け取って片耳で一緒に曲を聴く。
…うん、めちゃくちゃいい曲。
流石ユキだな、オレはこのままでも十分すぎるくらい大好きだけど、これからまたアレンジを加えて、歌詞まで付くんだ。
どんな歌詞が出来るんだろう。
Aを見ると、再び目を閉じて楽しそうに曲を聴いている。
…良かった、顔色も元に戻ってきている。
やっぱり、ユキはすごいや。
オレには、到底かなわないくらいすごい人だ。
……Aのこと、ちゃんと話すのはまた今度にしよう。
急がなくてもいい。
まだ、時間はあるはずだから。
―――――
【Aside】
「たっだいまぁ〜!モモちゃん、帰宅しましたぁ〜!!」
ガチャとドアが開かれて、兄ちゃんが入ってくる。
と、同時に強いアルコールの香りが鼻を突いた。
「…モモ、何時だと思ってるの。飲み会もほどほどにしろって言ってるだろう。」
千さんの機嫌が悪い。
眉間にしわが寄っている。
声も硬くて、怒っているのが分かる。
「ごめんユキ!番組のディレクターと話が盛り上がっちゃって、…でも聞いてよユキ!!今度始まる番組にレギュラーで出ないかって誘われたんだ!レギュラーだよ!!もし出れたら初レギュラー番組だよ!!」
兄ちゃんは嬉しそうに話す。
でも、顔は耳まで真っ赤で相当お酒を飲んでいたことが分かる。
「モモはそのレギュラーを取るために一体どれだけ飲んだの?モモの身体を壊してまで僕はレギュラー番組に出たいわけじゃない。」
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時