プレゼント? ページ11
探偵っぽく腕を組んで眉を寄せる兄ちゃんに思わず小さく吹き出す。
つられて笑った兄ちゃんだったけど、私の後ろに積み重なっている服を見てまた眉を寄せた。
「ん?あれ?…これって、Aの?」
『ん?……えっ!!?』
兄ちゃんが手を伸ばして取り出したのは………見覚えのあるペンギンパジャマ。
……いや、間違いない。
矢島さんが買って私に着せたことのある、あのペンギンパジャマだ。
【なんで入って…?】
いや…考えなくても分かる。
多分こっそり入れたな、矢島さん。
矢島さんの魂胆は分かる。
ペンギンパジャマを着た私を兄ちゃんたちに見せるためだ。
矢島さんの思い通りにはさせるか。
よし、どう切り抜けようか。
間違えて矢島さんが入れてしまったみたい?
入院してる子のパジャマ間違えて持って帰っちゃったみたい?
…でもそれで着なくていいって理由にはならないよね。
青くなる私に対し、兄ちゃんは無表情のままジッとパジャマを見つめている。
その時、ハラリとパジャマから紙が落ちてきた。
私と兄ちゃんの視線が床に落ちた紙に注がれる。
紙には黒いペンで大きく一言だけ書かれていた。
{☆百くんと千くんへ☆}
瞼の裏にニッコリと笑っている矢島さんが浮かんだ。
完全に逃げ道が無くなった。
引きつった表情で顔を上げる。
案の定、兄ちゃんはペンギンパジャマを見、私を見、パジャマを見、私を見……、ニヤァ……と不敵に笑った。
完全に危ない顔をしている。
「……A、」
『き、着ないよ?』
「でもこれ、矢島さんからのプレゼントだよね?オレたちに向けての。」
今度は兄ちゃんがジリジリとにじり寄ってくる。
ニッコリ笑ってペンギンパジャマを持っている姿は、何とも言い難いオーラを放っていた。
「大丈夫!オレとユキしか見ないから!他に誰にも見せないから!写真撮るだけだから!」
「はい、ご飯できたよ。…え、何?」
そして最悪な場面で千さんに気付かれた。
結局パジャマを着るまでご飯はおあずけと言われてしまって、それでなくても二人から逃げきれるわけないので観念して再びペンギンパジャマを着ることになった。
カシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ…
「うわぁ〜めっちゃ似合う!!めっちゃ可愛い!!!」
「へぇ…こういう服もあるんだ。ウサギとかもいいかもね?」
目をキラキラ輝かせながらさっきから連写し続けている兄ちゃんと、じぃっと見つめたまま怖いこと言ってる千さん。
『うぅ…』
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時