結婚相手募集され中2《サバイバルウェディング》

アトリエ ページ35

荒木「こっちっす！」


そこには美しい女性の姿が。
いや、正確には絵だけど。

「まさかこれ、私？」



荒木「そうっすよ。どう？」



「綺麗すぎて私じゃないわ」



荒木「俺からはこう見えてるよ」



「何重にも色眼鏡掛けすぎよ」



荒木「じゃあ、そこの椅子座って下さい」



キョロキョロと見渡せば、
沢山のラフ絵があちらこちらにあった。

私のこの間の写真も飾られていて。


「これほとんど完成に近いんじゃない？
写真見て描けば描けたんじゃないの？」



荒木「まだまだっすよ！
ここから肌の質感とか色を入れていくんで。
やっぱ、現物見てイメージ膨らませたくて」



私は美術の世界には疎いけれど、
あのラフ絵でさえ、充分に美しいと思う。





あれから1時間半が経った。

荒木くんは集中しているのだろう、
目つきが変わっている。

忙しなく絵の具を作り替えながら
色を重ねているようだ。





荒木「大丈夫っすか？一旦休憩します？」



「うん、じゃあ、ちょっと立たせて」

私はぐーっと１つ伸びをした。




荒木「…うあー、今のエッロ！！…」


は、？頭どうかしてるのか、コイツは。

私は無言の代わりに冷たい視線を送った。





荒木「…俺、Aさんを初めて見た時、
パステルの水彩画描きたいって思ったんすけど、
実際に会ったら、
油絵で描きたくなったんすよね。
乾燥に時間がかかるけど、
その分毎日大事に描いていきたいっつーか」



急に真面目に語り出す荒木くん。
調子良いな、



「…そう。ありがとう？、なのかな」


私はアトリエに飾られた絵を見たいと
ゆっくり見て歩いた。


…あ、スケッチブック

「ね、これ見ていい？」



荒木「…あ、う、うん。
あんまよく描けてんの少ないけど」



パラパラと見ると、
様々なデッサンが描かれている。

もちろんどれも素晴らしい出来栄えだ。




「いつから絵を描いてるの？」



荒木「うーん、物心ついた時から。
多分、小さい頃から絵は描いてた。
父ちゃんが画商だし、
母ちゃんはインテリアデザイナーだし、
絵が身近にあったんすよね」


なるほど、芸術家の家庭なのね。


「聞いて良いのかわからないけど、
この間、親の仕事がうまくいってないって…？」




荒木「父ちゃんが
前に本物って売りに出した絵が
実は贋作だったらしくて。
ちょっと揉めたのが原因。
ちゃんと鑑定士から
証明書は貰ってたんすけどね、」





「そういうのって証明書あってもダメなの？」

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