【リヴァイ】残酷で美しい世界に【進撃の巨人】 (ページ12)

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＃08 ページ12

「あの……なぜ、あの時……」

声を発したと思ったら、その音はすぐしりすぼみになり、止まってしまった。
再び俯いたジゼルが口を開くのを辛抱強く待てば、10秒ほどの沈黙の後、また俺と目線を合わせる。

「人違いでしたら申し訳ありません。
すこし、貴方に見ていただきたいものがあって、一緒に来ていただいても構いませんか?」

「なんで俺がお前に＿＿＿＿＿」

ついて行かなきゃならねぇ、その言葉をつづけようとして止まる。
ジゼルの真剣な眼差しは、俺の言葉を摘んでしまうほどの迫力で、次の瞬間には

「あァ。わかった」

絆された。この吸い込まれるように澄んだ青い瞳に＿＿＿＿＿。

　 ***

この人の話を聞いて確信した。
やはり、目の前のこの人が、身売りされかけた私を助けたのだ。

殴りたいのか、それとも、感謝をしたいのか、どうしようもない気持ちを抑え込むようにリングを握りこんで、クローゼットで眠る上着を思い起こした。
返されたところで、今更だろうし、着られもしないだろう。だが、ずっと返したかった。それが今叶おうとしている。
リヴァイへついてきてほしい、そう頼むと、一瞬怪訝な顔をして、結局私の頼みを了承した。

「ここです」

「なんだここは、テメェの部屋か?」

「はい。……中にどうぞ、何もありませんが」

そういってリヴァイを中に通し、部屋の中では一番座り心地がいいだろうベッドへ座るよう誘導した。
私は座ることなく、ベッドの足元に配置してあるクローゼットに手をかける。中には団服の予備たちと数枚ブラウスがあるだけで、他に目立つものは、あの時の上着のみだ。

「女の部屋とは思えない殺風景だな」

「普段はエルヴィンやハンジの手伝いをしていますから、部屋に戻るのは基本就寝時のみなんです。だから余計なものは置いていません」

リヴァイの声に応えながら、奥にある上着を抱えてクローゼットの扉を閉めた。
後ろに人の気配を感じ、ここまで来て決意が揺らいだのを感じるが、ここで折れては、もう気はないだろう。弱気な自分を叱咤して、眼前のクローゼットの戸を見つめながら口を開く。

「昔、名前の無い子供を助けた、と仰いましたよね」

「ああ。それがどうかしたのか」

「実は、私も昔名前がなかったんです。……偶然でしょうか?身売りされかけたところを助けられたこともあるんです」

今だ。流れでリヴァイのほうを振り向けば、予想もしない真剣な眼差しに私は射抜かれてしまった。