45話 久しぶりとは言えない ページ46
そしてテニスコートを通り過ぎて案内されたのは、大きな建物。
どうやらここが寮らしい。
「――――あれ、Aやないか」
建物に入ってすぐに、聞き覚えのある声に名前を呼ばれる。
無意識に視線を向けて、私は力なく「ああ……どうも」とつぶやくように言った。
そこにいたのは謙也さんと忍足さん。相変わらず仲いいなこの人ら。
忍「こんなところで何してんねん」
謙「なんや、けったいな荷物抱えてんなあ」
貴「誰とも会わないように祈ってたのに……」
謙「ひどいやっちゃな」
齋「やはりお知り合いなんですね」
ため息をついていると、齋藤さんが柔和な笑顔でこちらを見ている。
そしてこれからについて説明を始めた。
齋「由良さんなんですが、今どこにいるのかちょっと確認してきます。そしたらここに連れてきますので、少々待っていていただけますか」
貴「私は構いません。お手数かけてすみません」
齋「気にしないでください。それでは」
小さく礼をして、齋藤さんは寮を出ていく。
少し緊張していたが、とりあえず謙也さんと忍足さんが出てきたことで和らいだようだ。
心の中でお礼を言っておく。
私は背後にある椅子に座ろうと振り返り、脱力した。
忍足さんも謙也さんも、完全に私と話そうぜモードに入っている。
誰か私を安息の地へ連れて行ってはくれないだろうか。
謙「まあ座りィ」
まるで我が物顔で椅子を勧めてくる謙也さん。我が家か。
とまあツッコミを入れる気力もなく。
とりあえず座りたかったので、私は荷物を足元に置いて、「ああー」と母音に濁音が付くそうな声でどっかりと腰を下ろした。
忍「おっさんか」
貴「もう何時間かけてきたと思ってるんですか。そりゃ疲れますよ。途中山道だし」
謙「あそこ歩いてきたんか。やっぱ体力底なしやなあ」
貴「あんたは私の何を知ってるんだ」
げっそりとしながらも会話を続け、ここに来た経緯などをざっと説明した。すると2人は「そりゃお疲れさん」と他人事のように軽く流す。
それに若干苛立ちを覚えたものの、もちろん今の私に反撃する気力は残されていない。すでに少し眠い。
この私が休日に9時起きなんだぞ。これは快挙だ。
そう考えながら適当に2人と話をしていると、ふと2人の視線が私の背後に移る。
私は寮の入り口を背にして座っているので、何があるのかわからない。
何だろうと振り返る前に、数人の声が降ってきた。
「A!?」
「え、何でここにいんの」
「何してんだお前!」
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葉奈(プロフ) - そうですww作者がにこにー推しですww (2015年5月17日 19時) (レス) id: b46f08eacb (このIDを非表示/違反報告)
ユール - えーと…にこにー? (2015年5月15日 18時) (レス) id: 63bdae9473 (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - ありがとうございます!がんばって更新しますのでよろしくお願いします!! (2014年11月30日 18時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
yunyun - 合格、おめでとうございます。本当に良かったですね。更新、楽しみにしてますね。 (2014年11月30日 15時) (レス) id: 329a32a11c (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - 雪代さん» ありがとうございます!!! 頑張りますのでよろしくお願いします! (2014年11月10日 22時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2013年10月27日 21時