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34話 名前がわからない感情 ページ35

不「何借りてたの?」


本を返却し、次の本を借りようと本棚に向かうと、不二先輩がとなりに来てそう聞いてきた。

貴「時代小説ですよ。このシリーズです」

本棚を指さして、次の巻を手に取る。

不「へえ。面白いの」

貴「はい。かなり殺伐としてますけど」

不「殺伐と?」

貴「復讐系です」

不「ああ」

納得したように不二先輩が声を出す。
そしてそのシリーズの1巻を手に取って、ペラペラとページを捲った。


――――絵になるなぁ。


顔は綺麗で、女の人みたいに美人で線が細くて。けど体はしっかり男子。
これでテニス強いなんて、確かに、女子が騒ぐはずだ。

貴「――――」

思ったよりも長く、先輩を見つめていたらしい。


不「……A?」

貴「……っ!」

覚醒すれば、不二先輩はこちらを覗き込んで笑っている。

不「大丈夫?」

貴「あ、は、はい。大丈夫ですはい」

不「悩み事でもあるの」

貴「い、いえ」


先輩に見とれていました。なんて言えるわけがない。
後ろにてへぺろと付ければ冗談めかして聞こえるだろうか。


不「そういえば」

そのシリーズの1巻を手に持ったまま、不二先輩が私に向き直る。


不「大会、お疲れ様」


ぶわっと、風が吹いた気がした。
窓なんか、開いていないのに。


貴「は、はい……えっと、ありがとうございます。2位でしたけど……」

不「聞いたよ。延長? したんだってね」

貴「はい。もう、完全に、私の修行不足です、はい」

動揺を悟られないように、しどろもどろになりながら受け答えする。

貴「次は、絶対優勝します。個人も団体も」

不「……」

返答がない。

私何か変なこと言ったか。不安になって顔を上げる。


貴「――――――――っ」


不「そうだね。がんばれ」


同時に、柔らかい眩しい笑顔で、言葉を紡いだ。

貴「が、がんばり、ます……っ」

眩しすぎて、目をそらす。
急速に心拍数が上がった。

ヤバイ吐く。心臓吐く。気持ち悪いなんだこれ。


貴「あ、わ、私今日5時から道場に顔出す予定だったっ!」


ばっと思いついたことを、わざとらしく大きな声で叫ぶ。

貴「もう帰らないと! 先輩勉強頑張ってください! さようなら!」

呆然とする不二先輩をおいて、私は脱兎のごとく図書室を飛び出した。
そのままの勢いで昇降口まで走る。


貴「はぁ……はぁ、っ……。あああぁぁぁぁ。なんだこれ」


走ったあととは別の心拍数の上がり方。

そのまま頭を抱えて、唸りながらしばらくうずくまった。

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葉奈(プロフ) - そうですww作者がにこにー推しですww (2015年5月17日 19時) (レス) id: b46f08eacb (このIDを非表示/違反報告)
ユール - えーと…にこにー? (2015年5月15日 18時) (レス) id: 63bdae9473 (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - ありがとうございます!がんばって更新しますのでよろしくお願いします!! (2014年11月30日 18時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
yunyun - 合格、おめでとうございます。本当に良かったですね。更新、楽しみにしてますね。 (2014年11月30日 15時) (レス) id: 329a32a11c (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - 雪代さん» ありがとうございます!!! 頑張りますのでよろしくお願いします! (2014年11月10日 22時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/  
作成日時:2013年10月27日 21時

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