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28話 何でもないそのひとことが ページ29

「A」

購買で昼食を買おうと並んでいると、不意に後ろから声をかけられた。


貴「あっ、不二先輩。ちわっす」

不「こんにちは。すごい量だね、それ」

にこやかに笑いながら、不二先輩が私の持っている昼食を見て云った。
にこやかっていうか、これ苦笑かもしれない。

貴「そうですか? 桃よりは少ないですよ」

不「桃と比べてる時点ですごいよ」

なんて話しているうちに、なんとなく2人で食べることになる。
不二先輩はどうやら弁当らしい。



私たちは校舎の外に出て、木陰にあるベンチに座った。

いつの間にか空が青くて高い。
この間まで積乱雲がそこらじゅうに浮いていたのに。気が付いたらもう9月も半ば。新人戦まであと少し。


不「良く食べるのは知ってたけど……。もしかしてそれ、全部食べるの?」

貴「まさか!」

先輩の指さしたビニール袋からパンを取り出しながら、私は大げさに首を振る。
中には、おにぎり3個とパンが2つ。それに、コンビニの中華麺が入っていた。

貴「おにぎり2つは部活のあとに取っておきます」

不「でも中華麺とパン2つとおにぎりは食べるんだね」

貴「基本的に良く食べますからね、私。最近ホントにいっぱい食べちゃって」

そう言いながら焼きそばパンの最後の一口を口に入れる。

ああ、やっぱりうまい。焼きそばパンってなんでこんなにうまいんだろう。炭水化物と炭水化物の夢の(夢の)コラボレーション〜。


不「クスッ」

貴「先輩?」


不意に、不二先輩が小さく笑った。
まあ、いつも笑ってるんだけど。

しかし、今の不二先輩は、なんだかすごく楽しそうだった。


貴「不二先輩? どうかしました?」

不「ううん、何でもないよ」

貴「何でもないのにそんなににこにこしますか?」

不「僕、いつも笑ってると思うんだけど」

貴「あ、自覚あったんですね」

不「まあね」


そう言って不二先輩はまた笑う。
今度は声を出して笑った。

何がそんなに楽しいんだろう。




不「ねえ、A」

私が中華麺に手を出しかけた時、不二先輩はふわりと、

不「新人戦、がんばってね」

何でもないようにそう言った。


本当に何でもない、全力で鼓舞しているわけでもなければ、熱くそれについて背を押したわけでもない。ただなんということはないその「がんばれ」が、ぐっと、心の奥にしみていくようで。


貴「――――はい」


無性にうれしくなって昂ぶった感情が恥ずかしくて、それをこらえながら、私は力強く返事を返した。

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葉奈(プロフ) - そうですww作者がにこにー推しですww (2015年5月17日 19時) (レス) id: b46f08eacb (このIDを非表示/違反報告)
ユール - えーと…にこにー? (2015年5月15日 18時) (レス) id: 63bdae9473 (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - ありがとうございます!がんばって更新しますのでよろしくお願いします!! (2014年11月30日 18時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
yunyun - 合格、おめでとうございます。本当に良かったですね。更新、楽しみにしてますね。 (2014年11月30日 15時) (レス) id: 329a32a11c (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - 雪代さん» ありがとうございます!!! 頑張りますのでよろしくお願いします! (2014年11月10日 22時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/  
作成日時:2013年10月27日 21時

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