26話 お守りとまではいかないけどさ ページ27
スカイツリーと東京タワーだったら、私は東京タワーのほうが好きだ。
赤いし目立つし、東京タワーが長い間、東京都のシンボル的な観光名所だったこともあるんだと思う。
なにより、造る過程において、東京タワーのほうが歴史と人の思いを感じてしまうのだ。
こんなこと、誰にも言ったことはないけど。
金「たっかー!」
先ほどから同じ言葉を幾度も繰り返す金ちゃんを、白石さんが言うには、『犯罪者の目』で見ていた。
誰が犯罪者だこの野郎。
貴「うっわー、久々だな」
四天宝寺の面々は、金ちゃんを気にかけつつも、展望台で自由に行動していた。
白石さんに至っては、完全に金ちゃんの保護者だけど。
白「Aは来たことあるんやな」
ガラス張りの床の上を、興奮した様子で飛び回る金ちゃんを見ながら、白石さんがふと話しかけてきた。
貴「そりゃ、生粋の東京生まれ東京育ちなんで。小学生の時に見学で一回と、家族で一回って程度ですけど」
白「へえ」
貴「そういえば、大阪には行ったことないですね」
白「ホンマか?」
貴「はい。考えてみれば、由良はずっとテニス三昧で、私も弓道三昧なので、家族で遠くに旅行とか、あんまり行ったことない気がします」
白「なんたって、だれもが知る由良さんやからな」
貴「あれのモテる意味が分からない」
白「ははっ。そりゃ、身内にはわからんのやろ」
そう言って、白石さんがくすくすと笑いを漏らす。
身内にはわからない。
この類の言葉は何度もかけられたことがある。
『妹だからわからない』『近すぎてわからない』
ああ、わかりたくもないね。
そう吐き捨てるとみんな笑う。
きっと、心から嫌っているわけではないと、なんとなくわかってしまうのか。それもムカつく。
金「A!あれ何で割れんの?平気なんか?」
金ちゃんが頬を高揚させながらこちらを向く。
貴「ま、金ちゃんが全力を出さない限り、平気だろうね」
私はそう言って、脳裏に全国大会の光景をよみがえらせる。
公式戦ではなかったとはいえ、あの越前と互角に戦ったのだ。恐ろしい。だがかわいい。
しばらく遊びまわっていた四天宝寺の人たちが、だんだんと私と白石さんのもとに集まる。
金ちゃんのタイミングを見計らって、私たちは東京タワーを後にした。
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葉奈(プロフ) - そうですww作者がにこにー推しですww (2015年5月17日 19時) (レス) id: b46f08eacb (このIDを非表示/違反報告)
ユール - えーと…にこにー? (2015年5月15日 18時) (レス) id: 63bdae9473 (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - ありがとうございます!がんばって更新しますのでよろしくお願いします!! (2014年11月30日 18時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
yunyun - 合格、おめでとうございます。本当に良かったですね。更新、楽しみにしてますね。 (2014年11月30日 15時) (レス) id: 329a32a11c (このIDを非表示/違反報告)
葉奈(プロフ) - 雪代さん» ありがとうございます!!! 頑張りますのでよろしくお願いします! (2014年11月10日 22時) (レス) id: 884e662617 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hana1/
作成日時:2013年10月27日 21時