翼を、ひろげて

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他のマネージャーさんに
「今日は久原くんに付きっきりでいいからね。」と
謎に冷やかされつつ頼んだ物を受け取る。


『久原さん、みかんとりんごならどっちがいいですか？』
久「りんご、」


食べやすいようにカットされたそれを
器ごと渡そうとすると、


久「あ、」


口を開けて待っている。
……食べさせろ、という事か。




『…はい、あーん』
久「んー、おいひ」







何度か繰り返して完食した彼に
薬と水を渡せば、自力で飲み始めた。
…りんごも食べれたパターンだなこれ。
久原さんは甘えたかったんだ、
という事にしておこう。







片付けをしていると、久原さんの瞼が
少しずつ重くなっていっているようだった。


『久原さん、寝て大丈夫ですからね。』
「…やだぁ、」



そんなやりとりをしながら片付けを終え
様子を見にいくと、


久「…おわったん？」
と。


『そうですよ。』
久「じゃあさ、」





久「もうもどるん？」


濡れた瞳で上目遣いをしてくる。


……確実に私の何かが削られた。

『…一応戻らなくてもいいとは言われました。』



久「…ほんまに？」

どこか嬉しそうに、

久「せやったら俺のそばおって。ええやろ？」

熱を持った手が私の冷えた手を握る。



『…今だけですよ』
久「んふふ。ここ、きて？」


布団を持ち上げ、所謂"添い寝"をするように示された。

…仕方ない。

『お邪魔します…』

入った途端に抱き寄せられ、


久「つめたくてきもちええ…」


耳元で囁かれる。近い。








ドギマギしている私にはお構いなしで、
寝息を立て始めた久原さん。
がっちりホールドされて抜け出す事は不可能だ。

暇を持て余した脳内でキャプテンに報告をする。
…キャプテンは母性で良かったですね。
私はもっと面倒なものですよ、なんて。



ごちゃごちゃ考えているうちに意識が薄れていった。









…その後、昼休憩の時間に様子を見に来たキャプテンが寄り添って眠る姿を激写。
グループLINEで拡散されたその画像を見て困惑する私に、「風邪やなくてもこうしたいんやけど」と久原さんが爆弾発言をしたのは、また別の話だ。







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