普段は普通の女子大生 ページ7
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あんなにも社長に構ってアピールをされている私だが、普段は極々普通の女子大生をしている。
大学も東大だとか京大だとか、そんな化け物級のところではない。どこの県にもある感じの大学だ。
住んでいるのは東京だが、大学は隣の県に通っている。
別にふかーい意味はない。ただアパートが見つからなかっただけのちっぽけな理由だ。
「 あ、A〜!今日同じコマだよね?一緒に行こ〜 」
「 おけおけ〜行こ行こ〜 」
大学に着くと早速一番仲の良い友人と出会した。
彼女は大学で初めて仲良くなった内の一人。喋り方はちょっとおっとりしているけど、意外に言いたいことはズバズバ言うタイプの子。
怒らせたことはないけど、多分怒らせたら怖いタイプ。
社長もそうだという話は以前聞いたが、私も大学デビューに向けて容姿を一変させた人間だ。
一変、と言っても整形みたいな大それたことはしていない。
髪が長かったからバッサリ切って、地味なイメージだった髪を美容室で染めてもらって、慣れなかった化粧をちゃんとするようになって。
意外にも人って言うのはそれだけである程度は変われるようで、無事に私の大学デビューは成功したのである。
社長もあの様子だと成功したのかな。
その辺は聞いたことなかったな。
「 ちょっと、Aなにぼーっとしてるの? 」
「 あ、ごめん。考え事 」
「 ……ははーん 」
「 ……なに 」
「 Aちゃんもとうとう恋する乙女ですかな〜? 」
「 ざんねーん、そんなんじゃありませーん 」
またまたぁ、とか言われたが、本当にそんなんじゃないのだから、幾ら肘で脇腹をつつかれても彼女の期待している返答は出来そうにない。
伊沢社長に恋ねぇ……ははっ、ないない。あの人と私じゃあ立場が違いすぎる。
そりゃあ、私が契約先の女社長とかだったら、堂々と彼のアプローチかっこ笑に応えられたかもしれないが、私はアルバイトで彼は社長。いや、無いわ。天と地がひっくり返ってもない。
いや天と地がひっくり返ったら流石にあるか。
どんだけの確率だって話だもんな。
「 ほらぁ、恋ばな聞かせろよ〜 」
「 だからそんなんじゃないんすよせんぱ〜い 」
「 仕方ない。今日のところは諦めてやろう 」
彼女には悪いが、今日でも明日でも明後日でも来年でも、恋ばなを聞かせる機会は当分来そうにない。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時