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好きを言い訳にするな ページ47









 通知が止まない。一度は止まったそれだったが、夕方が近づいてくるとすぐにまたスマホが振動し始めた。
 気は乗らなかったが、一応確認だけはしておこうとスマホ画面をチラ見すると、まさかのマンションの下まで来ているとのこと。

 どこでこの場所を知ったんだ。そんな疑問が宿るが、すぐになんとなくの推測が組み立てられる。
 ……Aちゃんの後をつけたのか。







「 すみません、福良さん。俺ちょっと下行ってきます 」
「 急にどしたの? 」
「 いや、ちょっと……知り合いが来てるみたいで 」
「 あーなるほどね。はーい、いってらっしゃい 」







 他の人に迷惑が及ぶのは避けたい。ひとまず注意だけはしておかないと駄目だと判断し、俺は福良さんにそう告げて、オフィスを出た。
 エントランスを抜けると、私服姿の白石さんが壁に凭れて待っていた。しっかり日焼け対策もされていて、多分、ここで長時間待つ気だったのだろう。


 無意識の内に溜め息が漏れる。いくらAちゃんの後輩だからと多目に見ていたとしても、これは流石にやりすぎだ。限度がある。







「 あ、伊沢さん!随分と早かったですね。お仕事もう終わったんですか?良ければこの後食事でも――― 」
「 いい加減にしてください、白石さん 」







 捲し立てるような彼女の言葉を遮るように声を出せば、自分で思っていたよりも数倍低い声が飛び出した。それだけ、今日までに募った苛立ちは多い。

 俺は確かに、職場恋愛というものはしている。だがだからといって仕事を疎かにしているかと聞かれればそうじゃない。ちゃんとやるべき仕事はこなして、その上でAちゃんを目の保養にしている。
 それなのに、関係無い人間にこうも自分が作り上げてきたものを荒らされたら、誰だって苛立つ。



 頼むから、俺を好きだって言うなら……俺の大切なものを荒らさないで。







「 …… 」







 かなり強く言ったつもりだったのだが、彼女は気にした様子もなく、突然俺の胸元を掴んでくる。
 そして次の瞬間―――俺は白石さんに、唇を奪われていた。






「 こんなにも好きなのに、分かってくれないんですか? 」






 ふざけるな。なにが分かってくれないだ。
 彼女の腕を振り払って、睨み付ける。







「 ……好きを言い訳に使うな。第一、俺には好きな人が 」
「 その好きな人、逃げちゃったみたいですけどね 」
「 ……は? 」








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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時

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