くだらない恋のお遊び ページ34
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「 ……因みに、そこまで私に固執される理由は? 」
「 君が面白いから 」
「 すみませんちょっと河村さんに世界が追い付けてないです 」
彼の意味不明かつ予測不可能な言動に頭が痛くなってきた。
くらっと揺らめく脳内に、つい手が頭へ向かってしまう。いや、でもこれは河村さんが悪いって。
偏頭痛なんて今まで無縁だったが、今なら彼らの気持ちがなんとなく分かる。
この歳で知恵熱出したら笑うぞお前。
彼の世界に置いていかれて荒ぶっている私の頭とは対照的に、全ての元凶はニコニコと楽しそうに微笑んでいた。まるで伊沢さんのようだ。
「 なら世界に歩調を合わせるとしようか 」
「 是非ともその方向でお願いします 」
「 ―――君に一目惚れしたって言ったら、信じてくれる? 」
急に落とされる彼の声量。それでも確かに聞こえた、信じがたい五文字。
なにを言っているんだ、この人は。一目惚れなんて、そんなの、一番無縁そうな人なのに。そんな人が、私なんかを、一目見て?惚れた?
いやいやいやいや、無い。それはない。絶対にない。
まずそもそも私のどこに惚れる要素があるって言うんだ。スタイルが良いわけじゃないし、顔も普通だ。性格はこの通りだし、別に天然って訳でもない。
強いて言うなら傘は忘れやすいけど、でもそれだけだ。
あー待って、また頭が。
「 その様子じゃ信じてないみたいだね 」
「 そりゃそうですよ。一体どこに惚れる要素があるんですか。からかってるなら殴りますよ 」
「 これでも本気なんだけどなぁ。まぁそういうことだから、伊沢と君にはくっついて貰わないと、僕は諦めつかないの。だから頼むね 」
「 いや意味わかりません。てかそれカレカノになる必要あります? 」
「 少しは僕にもチャンスがないとつまんないじゃん 」
「 やっぱり世界が追い付けない…… 」
とはいえ、私自身彼の申し込みを断る理由もない。
伊沢さんからの告白兼プロポーズは半分冗談だろうから全部断っているけど、どうやら彼のは本気そうだ。
……少しだけ、まだ躊躇いはあるけれど。
「 もし伊沢を好きになったら、すぐに切り捨てて良いからさ。少しだけ俺のお遊びに付き合ってよ 」
こんな真っ直ぐな瞳に見つめられてしまえば、私は、首を縦に振るしかなかった。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時