神は全てお見通し ページ23
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半年目にして初対面だった河村さんとは、意外にも伊沢社長を餌にするとかなり盛り上がった。
本心はお互いに尊敬する社長兼CEOなのだろうが、やはりそんな相手にだって不満は抱く。今回はその『 不満 』とやらで共感の嵐が巻き起こった。
主に社長がいかに面倒くさい男かについては、驚くほど共感し共感された。
やっぱあの人面倒くさいですよね?
「 お疲れさまでーす…… 」
「 あ、おはようございます。社長 」
「 あぁ、Aちゃん。おはよ 」
するとそこへ、噂をすればなんとやらという説を立証するかのように、本人である伊沢社長がオフィスに現れた。
だがなにやらいつもと様子が違う。
普段ならここで「 え、Aちゃん?!なんで居んの?!?あ、もしかして俺に会いに来てくれた?!?え、付き合お?!?てか結婚しよ?!? 」とか騒ぎ始めるのだが、今日の彼はやけに静かだった。
騒ぎ始めないと様子が変だっていうのは、自分でもなんだか自惚れているみたいで嫌なのだが、今まで百発百中で騒がれたのだからそう思うのも無理ないだろう。
それに、心なしか彼の顔が赤いような……?
「 伊沢、お前風邪引いてるだろ 」
「 え……っ?! 」
「 やだなぁ。別に引いてませんよ、風邪なんて 」
……嘘だ。直感がそう私に囁きかけ、はたと我に変える。
どうして私は今、彼が嘘をついていると思ったのだろう。話口調はいつも通りだし、どこも怪しい所なんて無いのに。
もしかして、これが『 女の勘 』……?
「 無理すんのは良いけど、他に移す前に帰れよ 」
「 …… 」
「 伊沢?聞いてる? 」
「 あ、すみませ……ちょっと、頭が…… 」
そこで言葉は途切れ、私達が彼の口から最後まで言葉を聞くことは叶わなかった。
代わりに彼の体はぐらりと傾き、咄嗟に腕を伸ばすも、ひ弱な女の手では彼を支えきれずに、私も一緒に床へ倒れ込む。肩を強打したが、このくらいならば特に以上は無いだろう。
それにしても、この人の体熱すぎやしないか?これ39度あっても可笑しくないような体温だぞ?
え、まさかこの状態で来たの?
「 伊沢さん!聞こえますか!伊沢さん……っ!! 」
先程まで彼が不器用だなんて信じられなかったけど、今なら分かる。
周りに心配をかけないようこの熱で会社に来る彼は、間違いなく『 不器用 』だ。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時