神と呼ばれている人 ページ22
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「 もしかして、貴方がしずくちゃん? 」
「 え、あ、はい。そうです 」
社長を家に連れていった日の翌日。
久々にオフィスへ顔を出すと、存在だけは知っていた人物が私を視界に入れてそんな質問を投げ掛けてきた。確か彼は、視聴者さん達によく『 神 』と呼ばれている人物じゃなかっただろうか。
名前は……あ、そうそう。河村さん。河村拓哉さん。
思えば彼とはこの半年間、一度も顔を合わせてこなかったかもしれない。単純にタイミングが合わなかっただけの話なのだが。
「 あの、顔を合わせるのは、今日が…… 」
「 初めてだね。僕は河村。よろしく、しずくさん 」
「 私は雫石Aです。よろしくお願いします、河村さん 」
「 なるほど。雫石でしずくちゃんなのか 」
「 逆になんだと思われてたんでしょうか? 」
ついツッコミを入れてしまってから、ハッとして口を塞ぐ。
いかん。伊沢社長のせいで思わずツッコんでしまった。相手は上司だぞ。首が飛ぶぞ。胴と仲良くしてたかったら黙っとけ、私の口。
伊沢社長も確かに上司ではあるが、あの人はツッコミ不在だと余計調子に乗るから仕方ないというか……まぁそんな感じだよ。
「 ふっ……結構ズバズバ言う人なのか、君は 」
「 す、すみません……以後気を付けます 」
「 いや、良いよ。なかなかここまでハッキリ僕にものを言う人は少ないから 」
……さてはこれが『 おもしれぇ女 』ってやつか?はっは、まさかな。
ただ単に河村さんが物好きな人なのだろう。そう自分の中で片付け、頷いていると、彼はその様子を見てくつくつと喉を鳴らす。
笑う姿までつくづく絵になる人だ。神と呼ばれ始めた所以は偉人麻雀とか言う動画らしいが、そうでなくても彼が『 神 』と呼ばれているのは、こういうところなのだろう。
後は、圧倒的に優れたプロデューサースキルだろうか。
「 伊沢が君を好きになった理由、今なら分かるよ 」
「 ……私にはさっぱり 」
「 あいつは今までまともに恋愛してこなかったから。考えれば考えるほど裏目に出るような奴だけど、不器用ってだけだから、笑って許してやってね 」
「 福良さんにも似たような事を言われました 」
不器用。
あれだけ色んな事を一度にこなしているあの人を、彼をよく知っている人達は皆『 不器用 』と言う。
私には全然想像つかないなぁ。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時