料金は愛の告白で ページ2
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買い出しを頼まれてマンションの外に出ると、大粒の雨がネズミ色の空から降り注いでいた。
スマホで天気予報を確認すると、表示されているマークは曇りから雨に。
朝の時点で曇りのち雨とは書かれていたけど、完全に油断していた。曇りである方に一票入れてたせいで傘持ってきてないぞこん畜生。どうしてくれんだ。
まぁ、そんな文句を垂れたところでこの雨が止むわけがないのだけど。
自己紹介が遅れたが、今現在、傘を忘れたせいで屋根の下に立ち尽くしている私の名は雫石A。ピチピチの大学生である。
元々そんなに雨女では無い筈なのだが、降ってしまった以上仕方ない。オフィスまで引き返して誰かに傘でも借りてこよう。
最悪乾辺りでもパシらせよう。うん、それがいい。
「 Aちゃーん! 」
「 げっ 」
最低な作戦を立てながら雨空に背を向けたその時、オフィスで唯一私のことを下の名前で呼ぶ人物の声が飛んできた。
嫌な予感がする。
それはもう、ひじょーに嫌な予感だ。
恐る恐る振り返ると、やはりそこには、満面の笑みを浮かべて自身の車を乗りこなす一人の男性。
彼はマンションの前に車を止めると、予め下ろしていた窓から微笑みかけてきた。
な、なんて良い笑顔なんだ……相手が私でなければ確実に堕ちている。
「 ……なんですか、社長 」
「 いやぁ、なんかAちゃんレーダーが反応しちゃってさ。困りごと?乗ってく? 」
「 結構です。社長に運転なんかさせられません 」
「 そんな堅いこと言わないでよ。もう散々あんなとこやこんなとこ行ったじゃん 」
「 誤解しか招かない言い方やめていただけますッ?! 」
この笑顔でとんでもない語弊を生んでいく彼の名は、伊沢拓司。
一応、私が働いている会社、『 QuizKnock 』のCEO兼社長だ。
これだけの紹介で分かると思うが、彼は私なんかが気安く話しかけて良いような相手ではない、所謂『 超お偉いさん 』だ。
そもそも、今こうして冗談を言い合っていることすら不思議だというのに。
もっと不思議なのは、何故かこの社長、一アルバイトの私にめちゃくちゃ構ってくるのだ。
というか、異様に好かれている。それもオフィスで出会った当初からだ。
例えるなら、出会った瞬間から好感度120%だったみたいな感じだろうか。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月3日 19時