初めてのスマイル ページ9
.
やべえ…超恥ずかしい。でも、やっぱ要りません、なんて言うのは失礼すぎるし。カードなきゃ現金もおろせないし、財布取りに戻るしかねえな。
「「あの、」」
「え?」
財布取ってくるんで、と伝えようと声をかけたら店員さんと被った。思わず目を合わせたら、…あれ?
キ「あ…れ?りんちゃんの…」
「あ、やっぱり、ですよね?…こないだは、娘がお世話になりました」
まさかの、りくとりんのお母さん。こないだの猜疑心に満ちた顔と全然違う接客スマイルだったから、全く気づかなかった。ほんと、女の人って化けるな…
だけど今日は、それ抜きにしても随分柔らかい表情だった。誤解が解けたのかな。
「あの、お財布お忘れですか?ランニング中だったみたいだし…」
キ「あ!そうなんです、あのオレすぐ取ってくるんで」
「いいですよ、私出しておくので」
キ「は?あ、いや、そんな訳には」
「どうせ同じマンションだし、帰宅してから返して頂ければ。わざわざ往復するの、大変だし」
キ「あ、ああ…いや、でも」
「焼きたてのパン、是非味わって欲しいですし」
そう言うと、柔らかく微笑んでパンの袋をオレに差し出した彼女は、出会いから今迄の数々の出来事を吹き飛ばすくらい優しい女神に見えた。
キ「あー…じゃあ、お言葉に甘えて。えっと…部屋番号、聞いてもいいすか?」
「あ、ちょっと待ってくださいね」
そう言うと彼女は、メモ用紙に部屋番号と携帯番号をサラサラと記してオレに手渡した。
「あの、一応来る前に一本電話頂ければ。14時には帰宅してます」
「…わかりました。必ず返しますんで」
「ありがとうございました!」
先日とは打って変わってやわらかい声の彼女の挨拶を背に受けながら、オレは店を出た。
帰ってからすぐに食べたパンは、どれも笑っちゃうくらい美味しくて、冷めないうちに持たせてくれた彼女にオレは心から感謝した。
.
268人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いりや(プロフ) - 凛さん» ありがとうございます、そのコメントに私がキュンキュンしてます!特殊な関係の2人なのでまどろっこしいですが、付き合う前のきゅんきゅんを味わって貰えれば本望です。更新頑張ります(*´꒳`*) (2021年12月6日 17時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 毎話きゅんきゅんしてます…いりやさんが作る作品全て好きですが、この作品は特に好きで、出来た時から応援しています!これからも更新楽しみにしています! (2021年12月6日 11時) (レス) id: 766ff61372 (このIDを非表示/違反報告)
いりや(プロフ) - さんご。さん» 気にしてくれてありがとう(;ω;)!運営に問い合わせたら返事はないけど外れてました。本当に色々ありがとうー!モチベ戻ったので笑、更新頑張ります! (2021年10月1日 17時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
さんご。(プロフ) - わーーーー!!R外されてる!!よかっためちゃくちゃ安心しました!これからも作品楽しみにしてます! (2021年10月1日 16時) (レス) id: 964fb42fef (このIDを非表示/違反報告)
いりや(プロフ) - わんださん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!更新の励みになります。頑張ります! (2021年9月16日 21時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いりや | 作成日時:2021年9月11日 21時