たとえばこんな、出逢いでも【ky】

両方買っちゃえよ ページ38

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A「りくとりん、今日からうちの実家に泊まりに行ってるの。…それで、一人だからコンビニで夕飯買おうかと」

キ「あー、そうなんだ。随分デザート、悩んでたみたいだけど、ふっ」

さっきまで、目の前で真剣にデザートを選んでた女性がAさんだったと判ると途端に可愛く思えてしまうから不思議だ。

A「や、だって！コンビニって普段全然来ないから、たまに来るとワクワクして目移りしちゃってもう…」

顔を赤くして早口で説明してて可愛い。そうか、ちゃんと毎日料理作ってる人はコンビニ来ないんだな。

キ「ふふ、それでデザートは決まったの？」

A「まだ…マリトッツォと杏仁プリン…うーん…」

キ「はは、両方買っちゃえよ」

オレは両方カゴに入れて、更にパスタとサラダが入ったAさんのカゴも奪ってレジに向かった。

A「あ、ちょっ…」

全部まとめてサッサと会計を済ませて、先に店を出る。後から慌てて追いかけてきたAさんに、

キ「どうせ一人なら、一緒に食べる？オレんちでもいい、けど…」

あー、それは警戒されるか。

A「…公園で食べようか？テーブルとベンチあるから」

Aさんがコンビニの裏手の公園を示して歩き出したので、オレもそれに従う。さっきまでのどんよりとした気持ちが嘘のように、夜の入り口をワクワクした感情が彩った。


古ぼけた木で出来たテーブルにメシを並べ、向かい合って座る。

「「いただきます」」

二人で手を合わせて、コンビニのメシを食う。そんな中学生のデートみたいなシチュエーションでテンション爆上がりしてる自分が可笑しい。

A「キヨさん、細いのに結構食べるよね」

フフッと笑いながらパスタを啜る彼女。

A「あ、でも走ってるもんね！今日も、お店から見えたよ。走ってるとこ」

キ「「え？！ま、マジ？？」

思わずハンバーグを吹きそうになる。やっべ、見られてたか。

A「キヨさんて…在宅のお仕事だよね？」

ああ…ついに、聞かれたか。そりゃそうだ、いつでも真昼間から出没してるもんな、オレ。

A「あ、ごめん…言いたくなかったらいいんだけど。私も仕事聞いても多分、わかんないし」

慌てて謝るAさんに、本当の事を全部言ってしまいたくなる。…けど、今はまだその時じゃない。

キ「いや、別に言いたくないとか全然ないけど。…うん、ネット関係の仕事してるよ、家で」


貴女に会ってからというもの、些細ながら動画のストックを作るようになったのは視聴者はもちろん、TOP4にも内緒。

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