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「行秋さんのことはわかっていますよ。…枕玉先生でしょう？」
「え、なぜそれを…?!」
「稲妻の作家の方がいらしたとき、個性的な文字が並んだ紙切れを忘れていきました。手紙の文字と全く一緒なんですもの…」
ああ、確かに。いつだったか、八重堂の作家が僕を訪ねてきたことがある。
「私もあなたの作品を読んでいるし、あなたも私の作品を読んでいる。それなら、対等な関係ではありませんか？」
「あ、ああ…」
なんとなく言葉に詰まると、彼女はくすりと笑った。
「ね、行秋」
若い女性、という印象が、少女のようなものに変わった瞬間だ。僕は短住、と言いかけたのをこらえて、"A"と彼女の名前を呼んでみた。
「んふ、うん。…これで友達だから、あなたには話せるね」
僕の作品を読んでいるのか、ということを聞く間もなく、Aは手招きした。寝台のそばの椅子に座ってみると、"どこまで知ってるの？"とまず僕にきいてきたので、体調が悪いとしかきいていない、と。
「そっか。…体調が優れないことは確かなんだけど、本当はそれどころじゃないの」
「…と、いうと？」
苦笑いして溜息をついた彼女は、今までずっと合っていた目を離して俯いた。その様子は、僕に"嫌な予感"のようなものを感じさせて心地悪い。腹を抑えている。
「もうすぐ、死ぬの」
出会ったばかりの少女だ。
特別な情など抱いているわけもなかった。ただ気に入っていた小説の著者で、その小説が絶版すると言うから訪ねてきただけにすぎない。そのはずだ。それなのに今、どうしようもない絶望感が僕を取り巻いている。
「病気がどうしようもない方に向かっていったから、その。とにかく、どうしようもないの」
「どうしようもない、って…」
今どうしようもないのは、僕の方だ。もう彼女は、諦めてしまったのか？ただ死ぬのを待っているのか？そう思うと、僕のほうがずっと諦められなかった。
「変我剣記」の中巻で、主人公は姉に対してこう言った。
『剣が折れたからといって、もう戦えないというわけではない。折れた刃を相手に投げつける一手も、生身で飛びかかる一手も、一応ある』
A、その一手はもう試したのかい。
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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました！最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます！ (2023年3月6日 22時) (
レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか？」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか？ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか？いつも楽しく読ませていただいております！ (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まくらもと | 作成日時：2022年9月27日 1時
