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「手紙を送る術がまだ残っているかどうかはわかりかねます。少し特殊ですので、後程確認しに向かう必要があるのですが…。」
「どんな方法なんだい?」
「伝書鳩です」
…それのどこが特殊なんだい?と思わず言いそうになったが、泰然さんが続けるようなので僕は黙った。
「伝書鳩自体はそれほど珍しくありませんが…。短住さんの場合は、詳細な連絡先がわからないのです。ある茶屋の裏に、伝書鳩が一匹いまして、その鳩に手紙を渡すと勝手に届けてくれるのです。その後はまた違う鳩が返事の手紙を持ってきて…というサイクルです。」
「なるほど。では、その茶屋の裏にいる鳩に手紙を渡せばいいということだね」
「ええ。…しかし、『変我剣記』のことで連絡をする必要がなくなりましたから、もしかするとその鳩もいなくなっているかもしれません…」
僕は泰然さんに礼を言って、一人で茶屋に向かった。案内するという申し出は断り、かわりに少し休息をとるように言っておいた。
茶屋はそれほど賑わっていなかった。真面目そうな女性が一人、雑誌を読みながら茶を飲んでいる。店主は老婆のようだが、隣で朗らかそうな青年が茶を淹れていた。後継ぎなのだろう。
茶屋の裏にまわると、白い鳩が米をつついている。紫色の紐を脚に巻いていることから、それは短住先生の伝書鳩であると判断できた。
人懐こいのか、僕が指を差し出すと遊び始め、指一本でよくこれほど楽しめたものだと感心する。手紙を差し出してみると、鳩はそれを咥えてそそくさと出発していった。
茶を飲みたくなったので茶屋に入った。青年が茶の種類を尋ねてくるので、「目を瞑って手に取った茶葉」を煎じるよう頼んだ。
老婆は何をするでもなくただそこに座っていたが、ゆっくりと座り直したかと思えば、僕に言った。
「Aは、優しい子だよ。」
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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました!最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます! (2023年3月6日 22時) (レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか?」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか?ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか?いつも楽しく読ませていただいております! (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まくらもと | 作成日時:2022年9月27日 1時