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『話が違うんだけど?』

『Aを傷つけたくなかったのに』


『こればっかりは、無理』


 頭の中で反響する。

 昨日のAの声から、悲痛な叫びを感じた。拙者は元より反対していたが、それを感じ取ってしまった故、昨日は何も言うことができないまま眠りについてしまった。…否、平蔵と同じく一睡もしておらぬ。


 …時間が必要であろうか。


 彼女と話したい。心の安らぎとしていたものが突然なくなっては、心臓に風穴が空いたように痛む。

 帰る気にもなれぬ。そうしてふらふらと歩き回ってみるが、隣にAがいない。音楽室から、並大抵の者では弾けぬであろう旋律が聞こえている。難易度の高さがはっきりとわかる。必死に必死に、しがみつくように奏でられたその旋律は、皮肉にも美しいものであった。

 途端に止む音、微かに聞き取ることができるため息。そして、また音が重ねられる。どこか不安になる。どこか、安心する。


 …待て。


 もし聞き間違いでないならば、今のため息は。


 行かなければ。"走るなんて珍しいな"?すまぬが今は構っていられない。"楓原"の名を不思議そうに呼ぶ声より、ピアノの音に耳をすませた。


 すぐにでも声をかけたかったが、扉の前で踏みとどまった。彼女は気がついていない。近くに来たことでより鮮明に、必死の息遣いが聞こえてくる。しばらくその苦しむような演奏が続いたが、盛り上がってきたところで突然、鍵盤を叩く手が止まった。

 
「…う、ああああああああ!!!」


 床に叩きつけられる紙の束、不協和音。悲痛な叫びが、胸をぎゅうぎゅうと縛り付けてくる。もうやめないか。これ以上、自分を苦しめるのは。


 震える息と共に、指がそっと置かれる音がした。まだやる気であろうか。同じように苦しみの旋律を弾くのだと思っていた。


 ……しかし、次に奏でられたものは、先程とは違った。


 音の数。感情。

 
 これほど心を奪われる音を、聴いたことがなかった。

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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました!最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます! (2023年3月6日 22時) (レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか?」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか?ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか?いつも楽しく読ませていただいております! (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まくらもと | 作成日時:2022年9月27日 1時

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