ストレートティー / ミカ ページ31
※おリク
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紅茶がカップに注がれる音を聴いていると、心が安らぐ。糖は含まれていないはずなのに、甘い香りが私を包み込んでくれる。
「どうぞ。熱いので気をつけて…」
「ありがとう。良い香りだね」
ぎこちない動作で隣に座ったミカくんは、私には気をつけてと声をかけたくせに、ろくに冷まさずに口に含んだ。「あつっ」と言うその数秒で、紅茶は口内で溶けるようになくなってしまったようで。それほどの少量だった。
「ちょっと大丈夫?…少し冷やして飲んだほうがいいんじゃない?」
「いえ、いいんです。やっぱり、冷めるのを待ちます」
困り眉でそう言った。元素力を使わないのかな、なんて思っても、きっと神の目ばかりに頼ってはいけないとか、そんな考えがあるんじゃないかと考えると妙に納得して自己解決に至った。突然の茶休憩で用意できなかったお茶菓子のかわりに、私たちは無意識にお互いを知る。
「本当は熱いうちに飲んだほうが良いと思うんだけどね。でも残念ながら、私たち人間は丈夫さよりも危機から逃れる力が発達してきたから」
「僕は、それで良いと思います。…もし人間が丈夫であったなら、僕はこの紅茶をすぐに飲み干せたはずです」
「それなら、丈夫な方が良いんじゃない?」
「いえ、そうではなくて…。僕が熱いと思うからこそ、Aさんとより長い時を過ごせます。…僕が紅茶を冷やさないのは、少しでも長くあなたといたいからです」
湯気の姿が見えなくなってきたのに、未だに一口も口をつけていない紅茶。ミカくんが入れてくれたのに勿体ないと思って、少しだけ流し込んだ。
彼は素直だと思う。いつも感謝の言葉や謝罪の言葉は欠かさない。それに、こうして自分の気持ちを表現してくれることがある。その度にどれだけの人が救われるのだろう。特段辛いことがあったわけでなくとも、私はこの言葉が素直に嬉しかった。
「そっか、うん。…私も、ミカくんともうちょっと話したい」
ストレートな言葉ほど、相手に自分の素直な気持ちが伝わるから。
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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました!最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます! (2023年3月6日 22時) (レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか?」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか?ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか?いつも楽しく読ませていただいております! (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まくらもと | 作成日時:2022年9月27日 1時