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 目が覚めたとき、私は当たり前のように寝台に寝かされていた。ぼやけた視界を周りに向けると、アルベドがいつものように研究をしているのが見えた。恐らくこの寝台は彼が錬金したものなのだろう。クリップボードにそれらしき絵が見える。

 二度寝をしようか迷ったが、温かいものが欲しかったので仕方なく起きた。まだ視界も思考もはっきりせず、スクロースはいないのに、まるでそこにいるように感じたり、時にはアルベドが二人いるように見えた。


「おや、起きたんだね、おはよう。気分はどうかな」

「うん、少し…気持ち悪い」

「吐き気がするなら、洗面器を持ってくるけれど…」

「…もう少し寝るよ。そうしたらきっと良くなる」


 本来の目的を忘れて、気持ち悪さを我慢しながら布団に入った。自らの体が温まっていくほど遠のいていく、当時の記憶。私は今でも、自分はあのまま雪になってしまえばよかったのだと思う。母との記憶はもうほとんど忘れてしまったが、それでも肉親との死別を経て得たものとは孤独のみだった。そして、最後に母が残した言葉に、私は従うことができていないのだから。


_____「もし生きられたなら、人に幸せを与える…そんな子で在ってね」


 …お母さん、やっぱり無理だ。私にそんな力はない。人の役には立てない。いくら師匠に錬金術を教わっても、私の中にある得体の知れない願望のような何かにどう従って利用すればいいかわからない。そのもどかしさに感じる苦痛は、あの日の不安に似ている。

 嫌な気分になって、また気持ち悪さが増した。アルベドが、研究の手を止めて私の横たわる寝台に腰掛けたのがわかった。軋む音と、何枚も重なった布越しに触れる体。暫く黙って手を遊ばせていたらしい彼が口を開くのは、私が思考の中でどうしようもない不安に駆られたその瞬間だった。


「…君が何に悩んでいるのか、僕には知る由もないけれど、…僕は、君にいなくなられると困るよ」


 震える身体を隠すように、布団を深く被った。いつもより静かで柔らかい声に涙が込み上げてきて、抑えることも叶わず、滴る雫を布団が吸い取っていく。私は冷たい。そして、彼は暖かい。

□→←暖をとる / アルベド



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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました!最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます! (2023年3月6日 22時) (レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか?」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか?ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか?いつも楽しく読ませていただいております! (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まくらもと | 作成日時:2022年9月27日 1時

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