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「…はあ。」
「……」
「そんなにセノが怖いの?」
「こわい」
自分でも少し落ち着いた感じはするけど、未だにすぐそこにいるセノさんが恐ろしくて寒気がしたままだ。
どうして?と理由を尋ねるティナリに、困惑しているセノさんを見ないようにしながら答えた。
「拷問される…私絶対怒らせちゃう、串刺しにされちゃう」
「…セノ、Aに何したの?」
「覚えはないんだが」
それはそうだろうけど、と思いつつ、初めて顔を合わせたときに装置と私を交互に見て不審そうに顔を顰めたのは見逃さなかった。
あの時、更にセノさんが怖くなってしまった。…何かした、といえば"不審がられた"ことだろう。
探るようにキッとセノさんを見るティナリにも、彼は動じていないようだった。
「…俺が何かしたのなら、謝罪しよう」
ゆっくりと歩く音に体が強張りながら、横の方からする声が頭を突き刺す。
ここであんなこと言っていいだろうか?怒らせたり呆れられたりしないだろうか?それらの不安はとにかくティナリにでもぶつけるしかなかった。
「ぅ…」
「罪のない者には何もしない。ただ、その分初めは疑い深いところもある。なぜなら、俺が教令院のマハマトラだからだ」
顔は見ずに耳を傾ける。
「少なくとも俺は、お前は道を踏み外してはいないと判断している。…だから、何もしない。それに、俺は怒りを感じただけで手を上げるような人間でもない」
そう言ったセノさんはそれ以上何も言わなかった。ただ私に合わせて待ってくれているようだったので、話を聞いてゆっくりと、セノさんの顔をもう一度見てみた。
…思ったより、優しい顔をしていた。
「…ごめんなさい。商人を取り締まってるのを見ちゃったから、どうしても怖い人だって思っちゃって、それで…」
「ああ、そういうことだったのか…いや、仕方ない。お前は何も悪くない」
「それでも、勘違いしてちゃんと話そうともしないで本当にすみませんでした。…もう大丈夫です、実際は良い人だってわかりましたから」
軽く握手してみた。
…なんだ、怖くなんてないじゃん。
ティナリはやれやれと見ていたけど、それからは会うたび楽しく話をするようになった。
全く、あのときは学者として随分恥ずかしいことをしたものだ。
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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました!最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます! (2023年3月6日 22時) (レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか?」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか?ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか?いつも楽しく読ませていただいております! (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まくらもと | 作成日時:2022年9月27日 1時