信じてくれるあたたかい人 / 鹿野院平蔵 ページ12
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____あてもなく逃げた。
信じてくれる人も、信じられる人もここにはとっくにいなくて。どれだけ無罪を訴えようが、助けを求めようが、誰もが既にその"お尋ね者になった私"を信じきっていた。
海祇島まで走って、お腹が空いて、疲れて岩陰に座り込んだ。…抵抗軍に助けを求めるわけにもいかない。ここは間違いなく安全なはずだったのに、あたたかかったはずなのに、…今では。
「ゴロー…あいたいよ…」
今出会ったら、どんな顔をされるだろう。"こんなことをするとは思わなかった"と冷たく告げる友人の姿を思い浮かべ、また悲しそうな顔をするだろうかと想像すると涙が止める間もなく溢れてきた。
鳴神島にいたときも同じだった。
「信じてくれる人…だれか…」
届くはずもないそれは私の耳にだけ届き、一層苦しくさせる。どうして私なんだろう。どうして"証拠"は揃ってしまったんだろう。どうして、どうして。
「ここ一帯もくまなく探せ!あ?軍?当たり前だろ!匿ってたらどうする!」
「…うそだ。ここまで来たのに…」
どこか遠くから聞こえる大きな声に絶望感が私を襲う。どうしよう、捕まる。頭の中は真っ白で、涙は枯れることなく溢れる。体は固まって動かない。震えが止まらない。
「う、…にげなきゃ、にげなきゃ」
金縛りの如く固まった体を必死に動かし、ただ遠くへ歩く。走る。朝まで耐えよう。それで、海賊を探して腕を売ってでも乗せてもらえれば、どこかに連れて行ってもらえれば。
体力はとっくに限界だった。波の音が矢の風を切る音に聞こえる。砂に足をとられながら、今は思い浮かべたくない友人たちの顔がぐるぐる流れて転びそうだ。
「よいみ、や…とーま…っごろ、…そら、へい、…へい……!」
溢れ出る名前を認識して、たった今その主に追われている事実、それがまたボロボロの心に傷をつけた。
それで、後ろから呼ばれた名前が一番、今は嫌いなんだ。
_____「やっと見つけたよ、A、!」
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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました!最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます! (2023年3月6日 22時) (レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか?」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか?ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか?いつも楽しく読ませていただいております! (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まくらもと | 作成日時:2022年9月27日 1時