あたたかい炎の光 / 空 ページ2
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「……寒い。」
「雨、どんどん強くなってきたぞ…うぅ、寒い…」
思い返せばの話だが、石門に着いたあたりから少し怪しかった。俺たちは久々のモンドに安心感を覚えたせいで、あろうことか周りも見ずにのんびりと歩いていたのだ。…いや、パイモンは飛んでいたけど。
ぽつぽつと雨が降ってきたかと思えば、いきなり大雨に変わるものだから、焦ってモンド城に駆け込んだわけだが……その雨のせいで当の城内には一人も人が見当たらなかった。仕方ないから誰かの家の横の屋根で雨宿りしている。
「はぁ…雨が降ってなければ、今頃鹿狩りでニンジンとお肉のハニーソテーを食べてたのかな…」
「本当に食べることばっかりだね。」
「仕方ないだろ!オイラ今、すっごくお腹が空いてるんだ!!」
「はいはい…」
しかし、本当に困ったものだ。塵歌壺もこんな日に限って傷をつけたからとピンばあやに預けている。そのうえパイモンもさっきからうるさいけど実際お腹が空いているのは本当のことだ。
「あーあ!どこかからオイラ達のこと助けてくれて、美味しいごはんも振舞ってくれる優しい女神様が現れたりしないかなーーー!!!!」
「現れるといいね……へっくしゅ、」
さすがに風邪をひく。やっぱり西風教会まで走ったほうが良いだろうか。
「あれ、空くんとパイモン!そんなに濡れて風邪ひいちゃうよ」
…現れた。女神だ。本当に現れてしまった。
「二人とも傘に入って。すぐそこだから!」
「A…!本当にお前はいいヤツだよな…!」
礼を言って彼女の傘に入ると、思ったより近くて落ち着かなかった。俺の頭が傘にぶつからないようにとふんばる彼女の手から傘を奪って、目を合わせると良くない気がしたので適当にそらした。
「寒いでしょ?もう少しだから頑張って」
耳元でする声に、体の外の寒さとは裏腹に体の内側のさらに奥の方があつい熱を帯びるのを感じる。
「着いた、今鍵を開けるから……はい、はやく上がって!あ、今タオル持ってくるから!!」
バタバタと駆けていく彼女に”本当にいいヤツに拾われたな!”とパイモンは喜んでいる。俺も、内心この雨をラッキーだと思ってしまった。
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名無し3680号(プロフ) - まくらもとさん» 読ませていただきました!最高でした。素晴らしいお話ありがとうございます! (2023年3月6日 22時) (レス) @page34 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» 遅くなってしまってすみません。書き上げましたのでレス失礼します。書いてて「これでいいのか?」と悩んだんですが、まくらもとらしさを重視してそのまま投稿しました。ちょっと長いんですがよろしくお願いします〜 (2023年3月6日 21時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - 名無し3680号さん» リクエストありがとうございます!!3.5の風花祭での登場もあると思いますし、ブリュー祭を振り返って想像を膨らませながら書いてみますのでお待ち下さいな。いつもありがとうございます! (2023年2月27日 16時) (レス) id: b517cf66d5 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - リクエスト宜しいでしょうか?ミカ君で夢主と事故キスする話しなど書けますでしょうか?いつも楽しく読ませていただいております! (2023年2月26日 22時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まくらもと(プロフ) - ルーナさん» 好きじゃなかったら絶対「いつか旅に出られるといいね」としか言わなかったと思います。衝動で動いちゃう空ほんと… (2022年9月27日 22時) (レス) id: cfa18e3d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まくらもと | 作成日時:2022年9月27日 1時