前世の記憶を持った異能探偵！ part2

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なんだ、これは。
目の前の不可解な現実に、不動の思考回路は一瞬処理を止めた。
今までそこにいたのは、確かに警官だったはずだ。
不動がその目で確認したのだ。間違う筈はない。
しかし、今不動の眼前にいるのは、全く見覚えのない女性。
薄暗くてよくは見えないが、その双眸は少女のようにきらきらと無邪気な光に煌いている。

矛盾だ。
不動の視界がぐらつく。
明らかになにかがおかしい。
どこかでなにかが間違っている。
いや、そうであるべきだ。
だって、そうでなければ俺が見たものがおかしいということになるのだから。
絶対にそんなことはない。そんなことはない、はずだ。そんなことは＿＿

「不動！」
はっと黒江の声に前を向いた。
「いくよ！」
不動は反射的に戦闘態勢に入る。隣で黒江が低く腰を落としたのがわかった。
互いに視線を交わし合い、頷く。
無言の了解。
目の前の彼女の正体が何だろうが、今此処で何が起きていようが、彼女は今明確に自らを不動たちの敵だと言った。
それなら、なすべきことはただ一つ。
敵の隙をみて、切り払うのみ。
黒江と息を合わせ、懐に飛び込もうと体を沈めた時、

「うふふふふ、あはははは！ほんとに斬るのー！？斬っちゃだめー！」
響いた楽し気な声に不動は思わず動きを止めた。黒江も警戒するように一歩下がる。
「何が言いたい」
「あのね、あのね！秘密だよ、いい？ぜったい、ぜーったい秘密だよ！あたし、水死体が好きなんだあ！」
うっとりと頬に手を当て、恋する乙女のようにそんなことを言う彼女。
不動は毒気を抜かれたようにぽかんとする。

「ぶくぶくーって腫れた顔はぬいぐるみさんみたいでチャーミングだし、肌なんてふにゃふにゃーって柔らかくって、抱きしめたくなるの！」
「外側は水とお友達になって冷たいのに、お腹を開くとやっぱりあったかくて、ギャップがたまらないの！」
「ぷかあって浮いてくるときの最期にちょっともがくのも好き！みんな違う髪の広がり方も好き！お腹を押したらぴゅって出てくるお水も好きだし、お水に溶けてなくなっちゃいそうな儚さも大好き！」
「あのね、うふふふ！だからね、君たちには、ステキな水死体(おともだち)になってほしいの！」
花が咲くような笑顔で胸に手を当てる女性。
貴様の特殊嗜好など知ったことか。
そう言おうとしたとき、ぐしゃり、と後ろで音がした。
不動が首だけを回せば、そこには職員の制服だけが落ちていた。
「貴様、何をした！？」

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