ページ ページ7
．
彼の職業は大方把握している。QuizKnock株式会社のCEO兼社長。以前は編集長までも受け持っていたらしいが、この前その座を退いたと言っていた。QuizKnockはYouTubeで活動もしているため、可能性が高いのは、ストーカーという説。
神津は伊沢からの情報を纏めつつ、既に仕入れていた情報を改めて整理する。彼が視線を感じるようになったというのはここ一週間の出来事ではなく、一ヶ月ほど前からだったらしい。
しかも今回は、また少し違うとのこと。
「僕以外の社員も、視線や気配を感じると言ってて」
彼以外も。つまり彼が言うには、私の後ろに居る視線の正体は、他のメンバーの後もつけているのではないか、ということ。その可能性は多いにありえると、神津は思った。
恐らくこの女性は彼一人ではなく、�狒完��瓩�好きなのだろう。こういう場合、大抵の思考回路としては、彼らの中の誰か一人と付き合えたら嬉しい、辺りか。
―――これはまた後に分かることなのだが、神津の立てたこの仮説、実は彼女にしては珍しく大幅に外れていたのである。
「ふーん。つまり君は、私にどうしてほしいのかな？」
これは依頼だ。神津はあくまでも、彼が指示した範囲、または許可した範囲でしか動けない。
尾行はしないでくれと言われれば神津はそれに従う他無いし、犯人をあぶり出すなと言われればなにも出来ない。
トントントン、と机を人差し指で叩く音が響く。端的に言えば、ヤニ切れだ。煙草を無理矢理我慢しているため、若干イラつき始めているのであろう。扱いにくい女である。
その様子に気づいた伊沢は、小さく息を吸い、やがて、息を多く含んだ声を漏らした。
「……貴女を、雇っても良いですか」
ふっ、と疲れたように微笑んだ伊沢に、神津は机に叩きつけていた指先を止めた。そして思う。面白そうだ、と。
「……良いね、面白い。私が君達全員の命を守ることを約束しよう。ただしお代は高く付くぞ？」
「承知の上ですよ」
契約成立だ。神津は伊沢に契約内容の確認を行い、彼と固く握手を結んだ。背中に、痛いほどの視線を感じながら。
．
．
―――そしてこれが、変わり者探偵を迎え撃つ、大きな事件の始まりであった。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 611人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白菜(プロフ) - 河良紅好さん» ご報告ありがとうございます！助かりました！早急に修正させて頂きます！ (2020年6月16日 22時) (
レス) id: a14ef8aee6 (このIDを非表示/違反報告)
河良紅好(プロフ) - はじめまして、陰ながら白菜さんの作品を楽しく拝見させて頂いてます。大変失礼ですが、事件No.5の2ページ目の｢マーキング｣が｢マーケティング｣になっていました事をご報告させて頂きます。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: a18b40da37 (このIDを非表示/違反報告)
るーと - この作品を読むのが最近の密かな楽しみになっています。ご無理をなさらない程度に更新頑張ってください！これからも楽しみにしてます！ (2020年6月12日 21時) (レス) id: 300feac1d8 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 遅ればせながら新作ありがとうございます…！ Twitterで設定をお見かけして以来ずっと心待ちにしておりまして、余りのことに学校滅ばねえかなとまで考えておりました。早速背筋の凍るような展開にゾクゾクしております、更新頑張って下さい。 (2020年6月11日 20時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
神木(プロフ) - 占ツクを開くたびに更新されてないかなーって確認するくらい更新とても楽しみに待っています！更新頑張ってください！ (2020年6月11日 16時) (レス) id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
