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我関せず、といった様子で笑顔を貼り付け、口を閉ざした福良に溜め息を吐き、河村は一歩前に出た。
二歩後ろでは、その様子を「え、もしかして俺達にも回ってくるのかな」「やばい、僕なんにも考えてないよ」と小さな声で情報共有しつつ、見守っている渡辺、山本の姿。またその二メートル程先のデスクで神津を警戒しつつ、様子を窺う須貝、川上。
「河村と言います。どうも」
「ぴー君とは違って淡白だねぇ。よし、君はやーたくと呼ぼう」
「……僕の名前も既に把握されているんですね」
「うーん、君の名前というか、ここに居るメンツの名前は全員把握してるつもりさ。ね、なべ君もと君」
正面に立つ河村の後ろを覗き込むようにして体を傾けた神津の告げた名前に、後ろに居た二人はキョトンとした表情を浮かべる。なべ君もと君。聞いたことの無い名前だ。
だが流石高学歴と言うべきか。直ぐ様脳内で情報を整理し、名前の由来が自分達の名字であることを知ると、二人は仲良く「あ〜!」と声を上げる。完璧に同時であった。
その様子にくつくつと喉を鳴らした神津は、もう一度彼らに向かって「眼鏡の君がなべ君で、黒い子がもと君で間違いないね?」と確認を取る。間違っていないことを間違っているなんて言う必要はない。二人は一つ頷いた。
「で、未だに此方へ一切来ようとしないのが、須貝駿貴と拓朗君。拓朗君のその髪良いね。私金髪好きだぞ」
「……ありがとうございます」
「なんで俺だけフルネーム」
「どうやら貴方だけは同い年みたいなので、どうしよっかなぁと。決まるまではフルネームで」
そう。この女、実は須貝と同い年なのである。見た目に反して思いの外歳上であったことに、その事実を知らなかった渡辺と山本は「えぇ?!」と分かりやすく驚いている。顔には出していないが、須貝も内心驚いていた。
これで漸くお互いの自己紹介は終わった。ここから先は彼女が仕事の話を拒否する以上、神津をオフィスに連れてきた張本人、伊沢拓司に託す他無い。
この時、福良、河村、川上は全く同じことを考えていた。探偵を雇うとは言っていたが、何故よりにもよってこんな変人探偵なのだろう、と。
「因みに私の事はなんとでも呼んでくれ。はーい今日はここでかいさーん」
何故よりにもよってこんな、初めて来た場所で急に自分達を仕切ろうとする、この非常識でよく分からない変人なのだろう、と。
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白菜(プロフ) - 河良紅好さん» ご報告ありがとうございます!助かりました!早急に修正させて頂きます! (2020年6月16日 22時) (レス) id: a14ef8aee6 (このIDを非表示/違反報告)
河良紅好(プロフ) - はじめまして、陰ながら白菜さんの作品を楽しく拝見させて頂いてます。大変失礼ですが、事件No.5の2ページ目の「マーキング」が「マーケティング」になっていました事をご報告させて頂きます。 (2020年6月16日 21時) (レス) id: a18b40da37 (このIDを非表示/違反報告)
るーと - この作品を読むのが最近の密かな楽しみになっています。ご無理をなさらない程度に更新頑張ってください!これからも楽しみにしてます! (2020年6月12日 21時) (レス) id: 300feac1d8 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 遅ればせながら新作ありがとうございます…! Twitterで設定をお見かけして以来ずっと心待ちにしておりまして、余りのことに学校滅ばねえかなとまで考えておりました。早速背筋の凍るような展開にゾクゾクしております、更新頑張って下さい。 (2020年6月11日 20時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
神木(プロフ) - 占ツクを開くたびに更新されてないかなーって確認するくらい更新とても楽しみに待っています!更新頑張ってください! (2020年6月11日 16時) (レス) id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
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