愛とか恋とか《短編集》【 sh 】 (ページ45)

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『何やってんの？』

紫耀とお揃いのマグカップに手を伸ばした後ろから抱き締められて、電話越しに聞こえた紫耀の声が耳元でハッキリと聞こえた。心地のいい周波数に更に涙が溢れた。

「……なん、っで、」
『だから、なんで来ちゃダメなの？』
「……だって、撮影中、って、」
『あぁ、あれね、もう終わった』

嘘吐きも甚だしい。向き合う形になって見上げたら髪色は黒くなっていた。優しい顔だった。久しぶりに見る紫耀の姿に涙が止まらなかった。

『俺泣き顔見に来たんじゃないよ』
「だって、……っ、」
『おいで』

携帯を投げ捨て両手を広げて待つ紫耀の胸に飛び込んだ。

「……会いたかった、」
『俺も』

会ったらなんて言おう、なんて笑いかけよう、あれだけ考えていた思考を全て跳ね除けた紫耀は、手を取って指を絡めた。

『頼むから終わりにしようとか考えないで』
「……え、？」
『不安にさせてたよな、ごめん』
「……どうして分かったの、」
『あんな意味深なLINE、振られるかと思った』

今度は紫耀が泣きそうな顔を見せた。

あれだけで察するなんてどれだけ私たちの関係は崩れていたの。別れ話をする為に聞いたわけじゃない。ただ会いたかったんだよ。会いに来て欲しかったんだよ。

「……寂しかった」
『もっと言ってよ、前みたいに』
「え？」
『会いたいも、寂しいも、好きも、』
「だって重い女って思わない？」
『思うと思ってんの？』

ううん、そんなこと一度もなかった。いつからか紫耀に遠慮するようになっていたのは私だ。そっと抱き締められた温もりは素直な想いを引き出す。

「……好き」
『もっかい』
「好き」
『もっと言って』
「大好きだよ」
『俺は愛してるんだなあ』

不意に触れた唇から一瞬で離れた紫耀の頬は紅く染まっていた。照れた顔を隠すように再び引き寄せ合った深いキスは、愛を感じ、永遠を抱き締めた。

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