愛とか恋とか《短編集》【 sh 】 (ページ41)

今日:10 hit、昨日:37 hit、合計:119,111 hit

　・ページ41

．

ここまでの流れに嘘は１つもない。久しぶりに焦った。これはまずい。いやいや、確かに慎太郎くんすごいニコニコ笑いかけてくれてたけど、まさか気づいてるなんて思わなかったし。いやそれより。ここ最近なかなか思うように会えなかった私たちにとっては不幸中の不幸。県境の行き来も制限されてる今、週１で車をかっ飛ばして夜中でも会いに来てくれる紫耀に、とてつもなく申し訳なさが込み上げた。

『今日だって早く終わって会いに行こうと思ってたのにさ』
「……うん」
『まじで頭どうなってんの』
「……はい」
『こんなこと言いたくねえよ、俺だって』

徐々に声のトーンが変わるのが分かる。確実に１２０%で私の責任なのに、紫耀は手持ち無沙汰な私の左腕を引き寄せた。

『俺の許可なしに他の男たちを観に行くな』
「許可あればいいの？」
『俺は１００歩譲って言ってんの！』
「……うん、ごめん」

逆の立場なら絶対に許さないくせに。私って本当最低だ。
暗がりの車内に紫耀の匂いがいっぱいに広がった。

『オシャレなんかしやがって』
「え、かわいい？」
『ムカつく』
「……ちぇっ」
『俺の前だけにしろバカ』

言動が矛盾しすぎてる。
背中に回された手と、不意に触れた唇と。

「……ごめんね」
『もういい』
「許してくれるの？」
『会ったらどうでも良くなった』

ギュッと繋がれた手と手。シートベルトを締めてエンジンがついた。いつまで経ってもドキドキが止まらない。

．