愛とか恋とか《短編集》【 sh 】 (ページ38)

今日:13 hit、昨日:37 hit、合計:119,114 hit

◎：ただいまが聞こえたらページ38

．

ガチャリと玄関から物音がして身が引き締まる。先程までメディアを騒がせていた張本人がリビングに入ってきたからだ。チラッと見えたSNSのアプリには珍しく通知が溜まっていた。

『あれ、起きてたの』
「……どうしたの急に」
『LINEしたよ』

携帯と車の鍵を定位置に置き、洗面所で手洗いうがいを済ませる。一連の動作がルーティーン化していることに彼は気づいていないだろう。遠い目で見つめながら、緑のSNSアプリをタップした。

sho不在着信
shoいってい?
shoいくね
shoねてるか

数分間隔で送られているメッセージだっていつも気まぐれ。今日は珍しい。既読をつけて、その流れで青色のSNSをタップした。トレンドは彼のグループ名で溢れていて、タイムラインは彼らの名前で埋め尽くされていた。今じゃトップアイドルのメインパーソナリティと冠番組。たくさんの祝福の文字に便乗して典型的な猫背姿を目で追い声をかけた。

「おめでとう」
『え？』
「さっき見てたよ」
『……あぁ！ありがとう、ビックリっしょ』
「うん」

素直に喜べるほど出来た彼女じゃないことは前々から知っているからか私には仕事の話を全くしてこない。その代わり、メンバーとの出来事は事細かく話してくれるから、私もメンバーの一員になったかのような錯覚に陥ることもしばしば。

『ドッキリかと思ったもん』
「サプライズで良かったね」
『なあ、いつもテレビ見てくれてんの？』
「……見てるよ、割と」

事実。ただのファンじゃないかってレベルで紫耀の出る番組や雑誌はチェックしてる。でもそれを本人に伝えることはあまりしない。彼のプライドとかもあるだろうし、干渉したら嫌かなって。

．