淡紅舞う【煉獄杏寿郎】

48.もう叶わぬ恋敵との勝負 ページ48

「はは！そうかもしれぬな！


　だがな、俺はその人の悲しむ顔を見たくはないんだ。


　笑顔が素敵な人だから、


　たとえ敵に塩を送ることになろうと、


　彼女の笑顔が見られるのなら構わない。」




「煉獄さんはその女性のことを心から思っているのですね。

　その女性と恋敵はお付き合いを…？」




「そうだな。婚約しているからな。」




「そうですか…なんだか切ないです。

　でも、アタックしないのですか？

　恋敵と正々堂々と勝負するのもアリだと私は思います！！」





　冷たい風が縁側に吹いて、私の着物の裾を揺らした。





「正々堂々と勝負か…

　それができたら良いのだがな、

　もう勝負をすることができないのだ。」




「…どういう意味ですか？」




「それは秘密だ。」





　

　知ってしまった杏寿郎の気持ちとその優しさに


　心が熱くなって頬には涙が伝う。




　私は一度台所へ引き返してお料理を置いた。




「Aさん？」



「千寿郎くん！ごめん！

　目にゴミが入ってしまったみたいで、

　ちょっとお水で洗ってくるね！」




　足早に玄関を出て空を見上げる。



　真っ青な空は私の心とは正反対の様に冷静な色で


　私は深く息を吸って目を閉じた。





　落ち着こう。



　今の話は直接聞いたわけではないのだから、


　とりあえずは今まで通り接すれば良いよね…？




　今まで通り…




　頼れる同期として




　大切な仲間として…





　もう会えない彼を悲しませたくはないから



　今日だってこの後彼に会いに行くのに


　こんな乱れた心ではダメだ。








　でも、苦しいこの胸は一体どうしたらいいの…

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