36.揺れる灯り ページ36
「馬鹿とはなんだ！」
杏寿郎の頬ってこんなに柔らかいんだ。
肌も羨むくらい艶々している。
私はそっと彼の頬から手を離した。
「A…？」
「杏寿郎が心配するようなことはないから安心して。」
「そうか！」
「あなたのとんだ勘違いです！」
「それは悪かった！申し訳ない！」
「でも…勘違いをさせるようなことをしてごめんね。」
「そんなことはない。
きっと父上からだろう？」
俯いた杏寿郎の髪の隙間から見える
少し赤く染まった耳に
"触れてみたい"という衝動に駆られて…
私はおもむろに右手を差し出して
彼の耳に触れた。
「んっ？」
突然のことに驚いた杏寿郎と目が合うも、
行燈に照らされた彼の顔が美しくて見惚れてしまう。
私はもう片方の手で空いている反対の耳にも触れた。
「A？」
優しい灯りの中
ぼうっとただ杏寿郎を見つめる。
「A…」
杏寿郎は眉を下げて目を閉じたかと思えば、
急に鋭い目つきで私を捉えると
私の両手を掴んで畳に押し倒した。
「いい加減にしなさい…」
不意なことに声が出ない。
「そんな瞳で見つめて…」
そんな瞳…？
杏寿郎は私の耳元に口を寄せると、
いつもの彼とはかけ離れた
低く、切ないくらい優しい声色で私に告げた。
「…悪いが俺も男だぞ。」
「きょうじゅ…ろう？」
耳元から顔を離した杏寿郎と目が合う。
獲物を狩るようなその瞳に身動きが取れない。
すると次第に彼の顔が近づいてきて
私は思い切り目をつぶった。
「こら…」
杏寿郎はそう言うと私の下唇を指で軽く摘んだ。
「抵抗しなければ襲われてしまうぞ？」
薄く目を開けると、
そこには笑顔なのに悲しそうな顔をした彼がいた。
「ん…」
「君は立派な女性なんだ。
迂闊に男に触れてはならない。」
そんなつもりではなかったけど、
私の身を案じての演技だったのか…
「…はい。」
でも何だろう。やはり嫌ではないと思った。
むしろ触れて欲しいとさえ思ってしまった。
私は何を考えているのだろう。
私の心にはあの人がいるのだから…
あの人を愛しているのだから…
そんなこと…いけないでしょう？
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狐姫(プロフ) - ハウンさん» ハウンさん、こちらこそお読みいただきありがとうございます！引き込まれると言ってくださり大変光栄です！続編も更新しましたので、引き継ぎお楽しみいただけるよう頑張りますね！ (2022年3月1日 22時) (
レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、ありがとうございます！まっすぐな煉獄さんの深い愛情が表現できていれば…と思います。これからもそんな彼を言葉だけではなく、仕草や態度での表現ができるように努めたいところです！ (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
ハウン(プロフ) - 素敵な作品を作っていただきありがとうございます！ものすごく感情移入してしまって胸が締め付けられるくらい引き込まれました！続編楽しみにしてます！ (2022年2月28日 23時) (レス) id: 065a2165a6 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 今日も煉獄さんが素敵だ。押し付けがましいところは一切なく、ただただ彼女の幸せを願い笑顔を作れる彼は本当に素敵。 (2022年2月28日 21時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 彼はあまり内緒話など出来なさそうですよね(笑) 巧いだなんて言っていただけて…嬉しすぎて今夜は幸せな気持ちで眠れそうです〜！いつもありがとうございます。 (2022年2月26日 21時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：狐姫 | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時：2022年2月5日 21時
