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28.割れたお茶碗 ページ28

千寿郎くんの案内で台所へ着くと、



 私は杏寿郎から預かっていた新しいお茶碗を手渡した。




「これは兄上のですね!」




「うん!

 ここへ来る前に杏寿郎が

 いつも使っているものを今朝割っちゃったからって…」




 千寿郎くんは私の言葉に眉を下げて微笑むと、


 手にしたお茶碗を指でなぞり、静かに話し始めた。





「今朝、兄の茶碗を割ってしまったのは父なのです。」



「そうなの…?」




「実は今朝方、手が滑って茶碗を落としてしまってな!

 長年使っていたもので気に入っていたのだが、

 割れてしまったんだ!」






「昨夜、父はいつもより酒を飲んだようで…


 朝もだいぶ酔っていました。」





「そうだったんだ。」





 蓋の開けられた鍋からは


 白い湯気が立ち込めている。






「朝餉の前、父が水を飲みに台所へやってきた時、


 兄が任務についての話をしようとしたら

 
 急に声を荒げて机を叩いて…


 その際に父の手が兄の茶碗に当たり、


 床に落ちて割れてしまいました。」





「…なるほどね。」





 千寿郎くんはお茶碗にご飯を盛り始めた。




 その手は震えていて




 瞳は潤んでいた。


 
 


「兄は決して父を悪く言いません。


 父のことを大事に思っていることは


 兄の言動からよく分かります。」





「千寿郎くんも。」




「え…?」




「千寿郎くんも大好きなんだよね。


 お父さんも、お母さんも、杏寿郎のことも。」




 大きな瞳から綺麗な雫が頬を伝って落ちていく。




「千寿郎くんからも伝わってくるよ。


 家族が大好きで、大切で…優しさが伝わってくる。」




「Aさん…」




 千寿郎くんは持っていた茶碗を机に置くと


 私に強く抱きついてきた。





 肩のあたりがじんわりと


 温かく涙で濡れていくのが分かった。




 私は千寿郎くんの背中をそっとさすりながら声をかけた。




「大丈夫。


 大丈夫だよ。



 槇寿郎さんもきっと同じ気持ちだと思うから。」





「はい…」





 私の服を掴むその手には力が入っている。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - ハウンさん» ハウンさん、こちらこそお読みいただきありがとうございます!引き込まれると言ってくださり大変光栄です!続編も更新しましたので、引き継ぎお楽しみいただけるよう頑張りますね! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、ありがとうございます!まっすぐな煉獄さんの深い愛情が表現できていれば…と思います。これからもそんな彼を言葉だけではなく、仕草や態度での表現ができるように努めたいところです! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
ハウン(プロフ) - 素敵な作品を作っていただきありがとうございます!ものすごく感情移入してしまって胸が締め付けられるくらい引き込まれました!続編楽しみにしてます! (2022年2月28日 23時) (レス) id: 065a2165a6 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 今日も煉獄さんが素敵だ。押し付けがましいところは一切なく、ただただ彼女の幸せを願い笑顔を作れる彼は本当に素敵。 (2022年2月28日 21時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 彼はあまり内緒話など出来なさそうですよね(笑) 巧いだなんて言っていただけて…嬉しすぎて今夜は幸せな気持ちで眠れそうです〜!いつもありがとうございます。 (2022年2月26日 21時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年2月5日 21時

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