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16.赤い太鼓橋の上で ページ16

店を出た私たちは


 夜道を二人で歩いていた。



「今日はありがとう。

 ご飯まで奢ってもらっちゃって…」



「どういたしまして!

 美味しいものを食べると幸せな気持ちになるな!」



「本当だね。」




 赤い太鼓橋の上に差し掛かった時、


 杏寿郎は落ち着いた声色で私に声をかけた。



「君の過去のこと、

 辛いことだが俺は知ることができて良かったと思う。

 君の心に寄り添うことができるから。

 気づいてあげることができるから。」



 川の水に薄い三日月や赤い太鼓橋、


 二人の姿が反射してゆらゆらと映る。




「杏寿郎のことも…知りたい。」



 つい口が動いてしまった。


 私は咄嗟に自分の口元を手で押さえる。



「ごめん。

 言いたくないこともあるよね…

 無神経に口走ってごめんね。」




 彼は橋に手を置いて、空を見上げている。




「いや。Aになら話したいと思う。


 君が俺に教えてくれたように…」




 私はそっと彼の背中に触れた。



 逞しい背中。


 
 けど、きっと色々なことを背負い込んできたのだろう。




 彼は振り返ると困ったように微笑んだ。





「俺は両親と弟と暮らしていた。


 父は鬼殺隊最強の柱、強く優しい人で、

 
 幼い頃は稽古をつけてもらっていた。


 稽古は厳しかったが、情熱を持って指導してくれていた。」



 風が杏寿郎の綺麗な髪を揺すり、

 それが月明かりに煌めいて綺麗だ。



「それなのに突然、


 本当に突然…

 理由はよく分からないが、

 父は塞ぎ込んでしまったんだ。

 
 そんな時だった。

 父の妻であり、俺の母親である瑠火が病気で亡くなった。」



「そうだったんだ…」



 杏寿郎は私を見つめると優しい目をしながら話を続けた。



「それから父は余計に自室に篭るようになり、

 任務に行くのにも酒を手放せなくなった。

 今となっては君も知っての通り、

 炎柱であるものの任務にもほとんど行けない状況だ。」




 そういえば私が初めて槇寿郎さんと会った時も、

 酒瓶を持ってフラフラとした足取りだった。



「…彼がいなくなった今、

 私はどう生きていけばいいのでしょうか。」




「…俺も知りたいくらいだ。」




 あの時の言葉



 あの時の憂いを帯びた瞳は



 そういうことだったんだ。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - ハウンさん» ハウンさん、こちらこそお読みいただきありがとうございます!引き込まれると言ってくださり大変光栄です!続編も更新しましたので、引き継ぎお楽しみいただけるよう頑張りますね! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、ありがとうございます!まっすぐな煉獄さんの深い愛情が表現できていれば…と思います。これからもそんな彼を言葉だけではなく、仕草や態度での表現ができるように努めたいところです! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
ハウン(プロフ) - 素敵な作品を作っていただきありがとうございます!ものすごく感情移入してしまって胸が締め付けられるくらい引き込まれました!続編楽しみにしてます! (2022年2月28日 23時) (レス) id: 065a2165a6 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 今日も煉獄さんが素敵だ。押し付けがましいところは一切なく、ただただ彼女の幸せを願い笑顔を作れる彼は本当に素敵。 (2022年2月28日 21時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 彼はあまり内緒話など出来なさそうですよね(笑) 巧いだなんて言っていただけて…嬉しすぎて今夜は幸せな気持ちで眠れそうです〜!いつもありがとうございます。 (2022年2月26日 21時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年2月5日 21時

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