記憶が迷子 ページ38
*
3分28秒。
あれこれ考えずに、ただ自分の言葉を音にのせて歌っただけの3分半。
フッと照明が暗くなって、スタッフさんに呼ばれてふらふらとステージからはけた。
なんか拍手が聞こえたような気がしないでもないけど、あんまり覚えてない。
そんな余裕なかったし、お辞儀だけしてぴゃーって逃げるように退散したから記憶が…
「お疲れ様でした、あとはエンディングまで控え室でお待ちください」
「はい…ありがとうございました…」
ステージでは早くも次の人が準備してるのか、きゃーきゃーと客席が騒がしい。
なにはともあれ、終わったんだ。
ぶじに、なんとか、やりとげた。
やった…!
やったぞ、wizzz…!!
スタッフさんにもお辞儀してスタジオから出て廊下に来た瞬間、かくんと膝の力が抜けた。
あ、むりだ。立てぬ。
ぺたんと座り込んで、どうするかなぁとぼーっとしてるとバタバタと廊下の奥から賑やかな足音と、
「Aヌナー!!」
これまた賑やかなジミンが来た。
「どしたのっ」
「ひざ、力入らなくて」
「大丈夫?おんぶしよっか?」
「えっ、ううん、ちょっと休めば平気」
さすがにこんな場所でおんぶは恥ずかしい。それくらいの羞恥心はまだ残ってます。
とりあえず人通りが多いからとジミナに腕を引かれて、廊下の隅っこで2人しゃがみこんだ。
「どうだった?」
「やぁ〜…あっという間だね」
「でしょ」
「ちゃんと声出てたかな、マイク持つって慣れないから離してたかも」
「大丈夫だったよ」
「ほんと?」
「うん、俺見てたもん」
「よかった」
ホッと息を吐く。
ばくばくと心臓を酷使しすぎたせいかまだちょっと息苦しくて、落ち着かせるようにとんとんと左の鎖骨の下らへんを叩いた。
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作者名:tnk | 作成日時:2016年10月16日 22時