視線 ページ37
*
こども体温にぬくぬく癒されながらもやって来てしまった本番。
舞台裏で待機する間、ちらっと見えた会場は満員のお客さん。人、ひと、ヒト。
うぇー…
なんじゃあれ、こ、こわい…
みんな誰を見に来たんだろ。わたしじゃないことは間違いないけど。引っ込めーとか言われないかな…生卵とか飛んでこない?大丈夫?(大袈裟)
最悪のタイミングで久しぶりに登場したネガティヴ思考に、ズブズブと片足突っ込んでる間にも、どんどんタイムリミットは近づいてくる。
「wizzzさん、お願いします」
きた。
スタッフの合図でステージに上がる。慌ただしくセッティングされていく中、ぽつんと立てったままの私。
顔を上げたら、目の前には見渡す限りたくさんの人たち。
「っ…」
まるで突き刺さるような視線に、思わずぎゅっと目を閉じてしまった。
落ち着け、わたし。
大丈夫だってば。
ゆっくり息吸って…吐いて…
えっと、何か、落ち着けることかんがえよ、なにか、おちつく、こども体温、あ、あの日のこと、
あのときだってアウェーだったと思う。そりゃそうだよね、あんな道端で急にギターなんて弾き始めて、歌まで歌い出したんだから。
だけどみんな聞いてくれてた。よかったよ、って褒めてくれた。
場所が違うだけでやることは一緒なんだから、歌を歌う、それだけを今は考えよう。
(ジミン side)
スタンバイ中、ぎゅっと目を閉じたAヌナ。ちょっとお客さん達もざわざわしてる。
「ああ〜Aヌナ大丈夫かな…」
あんなにからかってたくせに、落ち着かずそわそわしてるホビヒョンとジニヒョン。
その隣で腕を組んで、怖ーい顔してるナムヒョンとユンギヒョンは、ヌナと一緒に緊張してるのかな。
ぎゅっと祈るみたいに手を握ってるテテと、目をキラキラさせてるグク。お前は本当にヌナが好きだね。
俺はジュノンヒョンの隣で、メンバーやお客さんやAヌナの観察。
なんでかな。
ここに来るまではあんなにそわそわしてたけど、今はすごく落ち着いて見てられる。
だってヌナなら大丈夫。
曲のカウントが始まって、目を開けたヌナはじっと前を見て、ふにゃって笑った。
ほら、ね?
*
209人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:tnk | 作成日時:2016年10月16日 22時