チムチムのおまじない ページ36
*
ジミナに言われたとおり、目を閉じてギターを弾きながら歌った日を思い出す。
「楽しかったでしょ」
「…うん」
楽しかった、すごく。
最初はジミンだけだったお客さんは、いつの間にかたくさんの人が聞いてくれてて。歌い終わると拍手してくれて、なんか歌手になったみたいで照れくさかった。
「聞いてる人みーんな笑ってたもんね」
「…あたしも」
「うん、ヌナも笑ってたね」
ゆるゆるになったほっぺは帰り道も緩みっぱなしだった。私もジミナもずっとニヤニヤしてるのが可笑しくて、また笑って。そうやって事務所まで帰ったんだっけ。
ふしぎだ。
ガチガチだった体からふっと力が抜けていく。リハーサルでマイクを握った時から止まらなかった手の震えもおさまってきた。
「Aヌナ」
名前を呼ばれて目を開けると、目の前にはふにゃって笑ってるジミン。周りにはみんなもいる。
「ね?大丈夫でしょ?」
「…うん」
「今日もあの時みたいにちゃーんと見てるからね」
「…ありがとジミナ」
あの時のようにできるかは分からないけど。あの時の気持ちは思い出せた。
やっぱりまだ怖いし泣きそうだけど。少なくともここにいる7人は見てくれてるから。
だいじょうぶ。
大丈夫。
繋がれた右手からじわじわ伝わるジミンの熱が、ざわざわしてる気持ちを落ち着かせてくれる。
「ジミナ、こども体温だね」
「えーい、Aヌナが冷たすぎるんだよ〜」
「そうかな?でもあったかい」
「人間ホッカイロでしょ」
「あはは、そうだね。すごくホッとする」
そう言ったからか、ジミンはその後もずっと隣で手を握っててくれた。
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作者名:tnk | 作成日時:2016年10月16日 22時