【名探偵コナン】私も「どんな関係？」と問い、ケンカ何度もしたわ。【降谷零】

お弁当は昨晩の残り物をどうアレンジするかが勝負 ページ8

割り箸を割って、タッパーを並べるとなんと綺麗で美しいことか。どこにでも売っている量産タッパーも、中身がこうも綺麗に詰まっていると、鮮やかで賑やかなものだった。

「いただきます」

　手を合わせて、箸をつける。

　醤油の香りが香ばしい青々としたほうれん草のお浸し、目に色を与えてくれるパプリカとエリンギの軽やかな歯ごたえ、箸休めにちょうどいい甘い卵焼き、柔らかなブロッコリーとほろり口の中で崩れるかぼちゃの甘辛煮。

　風見は無心で口を動かした。きちんと利き手で箸を持ち、タッパーのあっちこっちに箸を伸ばしてムグムグと咀嚼する。

　ヒレカツサンドは片手で食べられるようにか、一口大の小ささに切られていた。これも綺麗に並んでいる。断面図さえ、鮮やかだった。ヒレカツはただのヒレカツもあれば、間にシソと梅を挟んであるもの、シソとチーズを挟んだものもある。
　手始めに、風見は一番シンプルなヒレカツサンドを手にした。

　優しい手触りの食パンが、薄く染みるソースのヒレカツを挟んでいる。大きな口を開けて噛み付くと、中身が溢れることなくザックリ歯切れる。
咀嚼するごとに薄いソースの味とカツの旨味がぎゅうぎゅうと滲み出てくる。パンに粒マスタードを薄く塗ってあるのか、と気がついたのはこの時だった。鼻をスンッと抜けていく鮮やかな辛さがソースの甘さを緩和させる。
　シソと梅のものは、梅の酸味がいい具合に舌をさっぱりさせる。シソの涼やかさと、こちらにはパンの間に胡麻ドレッシングにわさびを混ぜたものが薄く塗ってあった。
　チーズのまったりとした舌触りとカツの油を緩和させるのにちょうど良かったのは、やはりシソだった。こちらにはケチャップが塗ってあった。これが驚くほどシソとお似合いで、ケチャップのほんの少しの酸味ですらチーズの味方についた。

　
「やあ風見君」

　頭上から声がかかったのはその時だった。風見はチーズとシソのヒレカツを口に咥えながら振り仰ぐと、赤井秀一がこちらを見下ろしているではないか。

「どうも」
「君が食べているそれ、うまそうだなと思ってな。一切れくれないか」
「あぁ、どうぞ」
「何か挟んであるようだが、これは？」
「こっちがチーズとシソでこっちが梅とシソです」
「シソ？ あぁ、大葉か」
「苦手ですか？」
「いや。ただどんな味だったかなと思ってね。こちらを貰うよ」

　赤井はチーズの方を掴むと、ひょいと大きな一口で口に入れ、そしてすぐに目を見張った。

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