猗窩座と閉じ込められる

猗窩座side・1日目 ページ16

ただ単純に

腹が立った。


自分が死ぬことが最善だと
何も解決せず
すべてを置き去りにして自己完結する勝手さに

覚悟もないくせに
自分で自分を殺せると思っている甘さに

自分の命を簡単に手放し
生きる道を探さず諦める馬鹿さ加減に


どれもこれも弱者のくだらない妄想だ


自分の命をかけることが強者に勝つ唯一の方法だと

命をかければすべて解決するなどと

全ては弱者の言い訳だ

『命をかけても駄目だったのだから仕方がない』

仕方がない訳があるか

全て己の力不足だ。
相手を圧倒する力を持つことを怠った自分の責任だ。

自らの命を賭けて
誰かを救ったとして
それがなんだ

自分の為に誰かが命をおとす
そんな方法で守られて

残された者が救われるとでも？！


何かを守る責任を
命を投げ捨てることで
自分以外の誰かになすり付けるな……………!!!


気がつけば彼奴の口に指を捩じ込んでいた。

どす黒い怒りが身体と頭を支配する



『肉を噛み切るとは』

『こうするんだ』



怒りに任せて彼奴の首筋に噛み付いた


A｢ウッッッ?!アァァァァァァァァ!!!｣

叫び声が聞こえる。

｢自分の舌を噛み切る痛み｣すら想像出来ない此奴に

｢死｣に向かう激痛を
迫り来る｢死｣の恐怖を

刻みつけてやりたかった


このまま殺すつもりは無いが

もし一言でも｢助けて｣などと

自分を傷つけている相手に懇願するようなら

本当に肉を噛みちぎってやろうと思った




A｢はっ……なせ……!!｣



(………っ！……俺は……………何をしている……………？)



唐突に我に返った




手を離し、彼奴の身体を床に放り投げる。

吐き出した唾にも
口元を拭った手の甲にも
彼奴の血


怒りに身を任せ
衝動的に行動するなど
鍛錬が足りない証拠だ

何故此奴の言葉と行動にここまで激高したのか

理解出来なかった


(人間の命など……………)


血を流し床に倒れ込む彼奴の姿に
誰かの影が重なる



やめろ

違う

消えろ

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