【Fischer's】前途多難な恋だから * モトキ

突然の * 01 ページ1

「・・・えっ、今日は予定があるって・・・」

目の前には自分の彼氏であろう男と、見知らぬ女性。

「ねぇ、だれ？この子？」
「あぁ、前に云ってたアイツ。もう終わらせるつもりだったしちょうど良かったなー」
「あぁ、あの。何もさせてくれないっていってた子かぁ」

目の前で会話が行われているのに、いまいち頭に入ってこないのは何故だろう。
働かない頭をどうにか動かし、声にした。

「あのっ、え・・・それは・・・」

「いや、何て言うかA可愛いし、スタイルもそこそこ良いしさ、それでおいて初(うぶ)ってギャップが良かったんだけど、面倒になってきてさー、ははっ」

突然予想もしてなかったことが起こると、全く動けなくなるって言うのは本当なんだ。
本題とは別なところで冷静な頭に、次にこの場に合う言葉が浮かぶわけもなく。
口からでたのは謝罪の言葉。

「えっと・・・そう、だよね。ごめん」

「ねぇ、もういいじゃん？早くいこうよー」
「まぁー、そう言うことだから。俺もうコイツと付き合ってるから。じゃーな、A」


* * *


「そんな男別れて正解だよ、こっちから願い下げ！」
「うん・・・そーだよね・・、そう、だよね」

少し薄暗いカウンターには私ともう１人。
グラスに入ったアルコールをグッと口元に流し込み、かれこれ数時間変わる様子がなく飲み続ける女性。
少し明るめの髪はショートで、切れ長の目、長いまつ毛。スラッとしたスタイルにサバサバした性格。可愛いというよりは限りなく美人系。私が男で、こんな子が彼女だったら、自慢だな。そう思える私の大親友の樹里。
目の前にいる樹里の彼氏、このバーのマスターを見ながらそんな事を考える。

今から数時間前、全く働かない頭をフルに動かした結果、親友の樹里に連絡をするという行動に出ることが出来た。頭が働いてない私にしては最良の選択で、樹里のお陰で少し落ち着く事も出来た。
あの人、もう"元カレ"になるのだが、元カレの事が好きだったのかと聞かれれば、好きだった。嫌いじゃなかった。
優しかったし、私が嫌がることはしなかった。でもそれは全て演技だったって考えると、悔しいやら、悲しいやら、気付かなかった自分が情けないやらで、やっぱり涙が出た。

ふと時計を見と終電の時間。
手元のグラスの中身をグッと流し込みバックから急いで財布を取り出しお金を置く。

「今日は本当にありがとう、また連絡するね！」

突然の * 02→

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