私はラメントーソ (ページ9)

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『…好きだったんじゃない？』

克樹がいつになく真面目な瞳で訴えかけてくるから、なんだかあの時の矢花を思い出してしまう

『…何が？』

『しらばっくれちゃって。嶺亜がAの事をだよ』

『…私、、、フラれてる』

『え？』

なんだろうこの沈黙…
フラれた私に気を遣ってる？…もう何年も前のことだからそんなのいいのに、、

『…A…嶺亜の事好きだったんだ』

『……うん、大好きだった』

あの時のあの感情がなんだか沸々と湧き上がってきて涙が込み上げそうだ
…泣いちゃダメだ、まさか未だに嶺亜を好きなわけあるまいし

『告白したんでしょ？えらいよ』

克樹が私の頭を腕に作った空間に通して羽交い締めのようにして少しだけ私を揺らした

なにこれ…

『…偉いなんてもんじゃないよ。勢い余って告白しちゃったし、、』

『何言ってんの？勢いが良かろうが悪かろうが気持ちを伝えたことには変わりないじゃん』

『本当？』

『成長したね、なんだか俺から遠い所に行っちゃったみたい、、』

克樹の寂しそうな瞳が静かに揺れて私の心も揺れた
…あれ、

まさか…

この感情って、、

身に覚えのある鼓動の高まりと、身体の硬直具合に自分のチョロさを感じてしまう

…矢花が聞いたらきっと聞いて呆れるだろう

『…いつもいつも、、肝心な時…ドレスが着れなくなった時とか、私が睡眠薬飲まされそうになった時とか…』

『す、睡眠薬？』

克樹がポカンとした顔でこちらを見てくる
まあ、その反応は至極当然だろう

『いっつも、嶺亜が助けてくれたんだよね…それで、嶺亜が代わりに睡眠薬飲んじゃって、私がラブホテル連れてった』

『ラ…ラブホ？』

『目が覚めたらなんか感情か、性欲か…とにかくなんか抑えきれなくて…嶺亜に告ってフラれた！』

『性欲、、？』

改めて言葉にしてみるとなんだか私って本当に後先考えない人間だよなぁなんて思う

『でも…嶺亜は、、』

『……

男の人が好きだった……

違う？』

『どうして、、』

『あの時、ほら。俺らでバンドやった時。あの時になんかピンときちゃったんだよね』

なんて恐ろしい人なんだ
私が二年かけて気づいた嶺亜のあの感情に彼はたったの数週間で気付いていた

『矢花が好きなんでしょ？…嶺亜』

『…そこまでわかってんの？』

『うん。お見通しだよ』

『他の人は？』

『わかんない、でも俺って意外とそういう勘は鋭いんだよね』