私はラメントーソ (ページ48)

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私はラメントーソページ48

『あ、やばい』

そう一言呟くと、矢花は変な柄のリュックをガサゴソとし始めた
なんだか不快で少し怪訝な顔をしてしまう

『なに、どしたの』

『俺、水道料金払わないと』

案の定、変な髑髏のリュックサックから請求書を取り出す
請求書は奥底から出てきたもんだからくしゃくしゃになっていて少し呆れる…人のことは言えないけど

『コンビニ行ってきます！』

そう一言言って走り出す矢花を横目に私も歩き始める
…矢花急いであんなもんなの？足遅くない？

日常が戻ってきている感覚があってなんだか安心する
それもこれも嶺亜のおかげだ

一度きりの人生だもんラメントーソ(かなしげ)なものじゃ勿体無いじゃん
もっともっと恋愛もしたいし、幸せな結婚もしたい
…矢花の職場の人紹介してもらおうかな
なんだか吹っ切れた人間って強いんだな…と身をもって実感することができている

最近、テレビとか新聞とか見てないなぁ
情報を意図的に遮断しすぎていて流行りの曲もわからない

でも今はそんな事で悲観的になる私じゃない
5年前ぐらいに流行ったあの曲で鼻歌を歌いながら歩く…やっぱこっちの方がいいよね

なんだか気分が上がって軽く足でリズムなんて刻んだりもしてみた
…その時

誰かの肩と強くぶつかり合った

去年の冬に買った白いコートに茶色いシミが広がっていくのが見えた
あぁ、リボンも付いてて結構気に入っていたんだけどな、、なんて考えているうちに私たちは床に叩きつけられた

『…すみません！！』

『あ、いや…こちらこそ…お怪我はないです……か』

最初はチクショー！コート気に入ってたのに！弁償しろ！なんて気持ちを抱きながら顔を上げると…なんとびっくり…
そこにはイケメンが立っていたではないですか！

『ぜんっぜん大丈夫ですよ！ほら、この通り！』

一人で怪しげな動きをしてイケメンに苦笑いをされる

『…お兄さんこそ、大丈夫ですか？』

…お兄さん、、手に包帯巻いてる…まさか私とぶつかった時…
いやいや、そんなわけないか。この一瞬で包帯なんて巻けるわけがない

『俺は大丈夫なんですけど…コート…すみません。弁償しますね！』

『いや…そんな悪いですよ。そんな高くもないのに…』

お兄さんはまた申し訳なさそうに少し考え込んでしまった

『あっ、俺、この近くで美容師やってるんですけど…無料で一回やりますよ！』

お兄さんは私の手に名刺を押しつけていった

そこにはお洒落な字体で【REN】と書いてあった