私はラメントーソ (ページ45)

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『あんなに会いたかった母親に会えた時は…まあ、嬉しかったけど複雑な気持ちだったかな…』

『やっぱり…？』

『流石に俺ももう大人だったからね…あの女が俺への罪悪感とかただ俺に会いたいって気持ちだけで俺に会いにきたわけじゃないってことはわかってたからね…そんな素直には喜べなかったかな』

『…そう、、だよね』

あの女の考えたことだ
なにか目論みがあってのことだったのだろう

『まあ、それでも嬉しかったんだけどね…俺って本当バカ』

『…馬鹿じゃないよ…嶺亜は馬鹿じゃない』

『なんで子供ってあんなに親に執着しちゃうんだろうな』

『…そうだね』

嶺亜は胸ポケットから四角い箱を取り出す
…そっか、、嶺亜。タバコ吸うんだった

『ちょっとごめん…』

私はベランダの窓を開けて外の換気扇を回す
一人で部屋に戻っても何も考えられずただぼんやりと外を眺めるばかりだった

『…嶺亜君、辛かったんですね…』

『…え？矢花？いたの？』

『酷いじゃないですか！ずっといましたよ！』

『ごめんごめん…全く気づかなかった…』

『ていうか、嶺亜君ってタバコ吸うんですね』

『私も全くそんなイメージなかったからびっくりしたのよ』

『俺ら…嶺亜君のことまだまだわかってないんすね』

『…そうね、、』

矢花が無言でティッシュを差し出してきたのでありがたく受け取って鼻水をかむ
なんだかスッキリした。鼻も、心も

『嶺亜おかえり』

『別にタバコ吸ってきただけなんだけど』

『いいじゃん別に！』

嶺亜はまたいつもの優しい顔で笑って『あの女が病気になったって時も…』と、続けた

『俺の心は決まってたよ。絶対にAと慶に負担はかけさせないって』

『…嶺亜』

『嫌なことばっかりじゃなかったよ、Aのお父さんとか、中村さんとか？俺の事息子みたいに可愛がってくれたし、むしろ楽しかったかもしれない』

中村さんもお父さんも…嶺亜のこと大事に思ってくれたんだ
なんだかそれだけで心が温かくなる

『でも…Aたちにそのことを伝えなかったのは…俺の中にもしかして母親を独り占めしたいって気持ちがあったんじゃないかって…今でも思うんだ

小さい頃にずっと側にいたお前らにまた母親を取られちゃうかもしれないって…』

きっと辛いのは私なんかじゃなくて嶺亜なのに胸がぎゅっと締め付けられる

『でもね

俺はAのことが大好きだよ』