僕はアンプロンプチュ (ページ28)

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『お母さん、起きた？』

先輩がお母さんの背中に手を添えてゆっくりと起き上がらせる
まだぐったりとしている様子が見てとれてなんとなく居た堪れなくなる

『A。ごめんね…迷惑かけて、、』

『そんなこといいわよ。…何があったの？』

先輩のお母さんの唇が震えて一気に暗い表情になる
…まさか中村さんが、、
そんなことをする人には思えなかったけど…人ってわからない

『中村さんがうちのお金を持って逃げたの…気付いたのさっきなんだけど、、』

俯きつつゆっくりと言葉を紡ぐ
一言一言から重い何かが感じられて俺らの心にもその重荷がかかるようだった

『…いくら、、？』

『驚かないで聞いてね。…百万円』

『ひゃ、ひゃくまん？』

先輩がカエルのようにひっくり返って机に頭をぶつけていた
…痛そう、、

『…もしかして慶の留学費用とか、、』

ひっくり返ったまま言葉を発する先輩を見かねて起こしてあげた
そのまま先輩は喋り続ける

『…ごめんなさいね。A…』

お母さんが申し訳なさそうにする。おそらく、そのお金も中村さんに持ち逃げされてしまったということだろう

先輩の方をチラリとみるが、その顔は怒りなのか悲しみなのか疑惑なのか…その真意が読み取れなくて勝手にヤキモキとしてしまった

『…本当にごめんねA。…お母さん本当に男の人を見る目がないみたい、、』

『…ほんとだよね』

もっと慰めの言葉とかかけてあげれないのか？と思うけど先輩は先輩で何か思うことがあるようで唇を噛んで下を向いていた

『…慶には連絡したの？』

『うん、お母さん、焦っちゃって…Aの次に慶に連絡しちゃった、、』

『そう、、』

また先輩が複雑な顔をしてため息をつく

『…私帰るね』

『えっ、帰るんですか？…泊まっていかれるとか、、』

人の家の事情に口突っ込むようなことしない方がいいかなと思ったけど、先輩の冷たく突き放すような口調に思わず意見してしまった

『そうよ…お母さん不安なの。A、今日は一緒にいてくれない？』

そう言いながら先輩に目線を合わせる
先輩はなんだかきまり悪いように目を逸らしてごめんね…と一言言う

何故だ？

忙しい？
いや、俺が見ている限りそこまで忙しいとは思えない

お母さんの事をあまり心配してない？
いや、あの時の先輩の焦りようは本物だった

じゃあなんだ…？
もしかして慶君の心配？