僕はアンプロンプチュ (ページ27)

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『とりあえず私実家帰る！』

『大丈夫ですか？』

『あ、…お金持ってきてないんだ…』

先輩がジャラジャラとうるさい小銭ばかりの財布を見て顔を青くする

…はあ、世話のやける人だな、、

俺は先輩の手首を掴むと走り出した

『ちょっと待ってって！』

『なんですか？急がないと』

『矢花も来るの？』

『俺は外で待ってますよ』

『でも私お金…』

『俺払いますから。行きますよ』

先輩は小さな声でありがとうと呟くと俺の背中を強く押してから走り出した

『ここからは電車で三十分ぐらいよ』

『まあ一本で行けますからね』

二人で少し混んでる電車に乗り込んでただただ駅を通り過ぎているのを待つ

きっと先輩は気が気でなかったのだろうけど俺にはそんな素振りを見せていなかった

なんだかそれが可哀想で俺の気分も一緒に下がっていった

『ほら、矢花。着いたよ。もたもたしてたら置いてくよ？』

『…すいません、、』

先輩の地元に来たのは去年ぶりだと思う
あいかわらず大都市で、Tシャツにジーパンの俺はなんだか浮いているのではないかとソワソワする

『…なんか、自信無くなってきたなぁ…』

いざマンションに入ると言う時に先輩がポツリと不安を漏らした

『…やっぱ入るのやめようかな、、』

『不安になりました？』

『…お母さんがどんな感じになってるか怖いっていうか…』

先輩の家の階に着くと、フロア一帯に女の人が泣き叫ぶような声が聞こえたきた

『お母さんの声だ！…ねえ、矢花も一緒に来てくれない？』

『いいっすけど、、』

『ごめんね、…人の家の修羅場なんか見たくないよね…』

『別にいいっすよ。俺らの仲じゃないっすか』

先輩がビクビクしながら鍵を開ける

『お母さん！』

『ねえ、どうしよう矢花。返事ないよ…』

電気がつけられてない
…中から物音一つしない

これはなにかまずいことになってるのではないかと急いで二人でリビングに走っていく

リビングの真ん中にポツリとある机の上に先輩のお母さんがぐったりと倒れ込んでる様子が見えた

『お母さん！お母さん！』

先輩がお母さんの元に急いで駆け寄る

『…寝てるみたい』

…俺らは最悪な事態も想定していたが、そこには至らなかったようで心底安心する

『ごめん、お母さん運びたいから手貸してもらってもいい？』

『もちろんいいっすよ』

先輩と二人でお母さんを運ぶが成人とは思えないほどの軽さでなんとなく心が詰まった