猗窩座になってるなんで【煉獄杏寿郎】

温泉 ページ45

 

｢煉獄さん、秘湯に入ってみませんか｣

｢うむ。入ろう！しかしそこは秘湯ではないな。あからさま過ぎる。むしろ逆にある彼方の湯が怪しい｣

Aを追い返す事より秘湯に興味を示した煉獄が、逆のずっと向こうにある奥まった湯に当たりをつけ、素っ裸のままずんずんと進んで行った。

猫座がちょうど煉獄の後側の腰にへばりついてその下は見えない。筋肉質な背中を余す事なく眺めていると煉獄たちは秘湯を見つけ入って行った。


「む」

「にゃーーあ」


一人と一匹の悲鳴が聞こえる。

湯に入り2、3歩進んだところで煉獄が足を滑らせた。踏ん張ろうとしたがそこから深湯になっている。藁をも掴めと猫座の尻尾を掴むと揃って湯の中深く沈んでいった。


「どうしましたか⁉︎」

急いで秘湯に向かうと誰もいない。湯が若干波打っているが。

「煉獄さん！どこですか？猫座さん！」

どこに行ったのかとても不安になってると、湯しぶきと共に泉から勢いよく煉獄が飛び出し四つん這いになって咳き込んでいた。

「大丈夫ですか！」

素っ裸なので目のやり場に困る。とりあえず後ろから浴衣を被せなんとか着てもらった。

煉獄の様子がおかしい。何かプルプルと震えているような

「煉獄さん、大丈夫ですか？」

煉獄に訊ねると、代わりに後にいた猫座が応えた。


「よもにゃ」

「……え？」


よもにゃ？って？なにどうした

かわいい。かわいいが……嫌な予感がした。もう何があってもおかしくない。


「うおおおおおお、素晴らしい！」


今度は煉獄が立ち上がり拳を握って笑っていた


｢これはいいぞ！杏寿郎！なんと素晴らしい！鍛え上げられた筋肉、至高の領域に近い！｣


予感が的のど真ん中を貫いた。煉獄と猫座が入れ替わっている。とても面倒な事になってしまった。

とりあえず人に見つかりたくない。一人と一匹を連れて部屋に戻ると、「食事が用意されてますよ」と炭治郎が言う。さっそく人に見つかった。


「美味い！美味いぞ！」

人間の食べ物が煉獄になった猗窩座の口に合っているようで、ご機嫌に食べているのを炭治郎がじっと見ている。

｢煉獄さんの匂いがいつもと違うなあ｣
｢気のせいだよ。温泉の硫黄の匂いでおかしくなってるんだよ｣

そうなのかなぁと半信半疑な炭治郎だが、流石に猗窩座の存在は言えない。

 

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