月とオレンジ 13

513 記憶喪失 ページ22

「太輔。」






大急ぎで病室に駆けつけると

私の声に体を起こした太輔が








太「…こんにちは。」








って、すごく他人行儀に頭を下げた






…。







あ、そっか


会社では敬語な私たち






その延長だと思ったけれど








太「えっと…俺の…友だち…？」






って首をかしげる






え…






太輔の質問の意味に戸惑っていると







「こんにちは。

太輔のお見舞いに来てくれたんですか？」








って、扉の方から声がして振り向く






あ…






ふたり同時にフリーズした




だってその人は



あの夜、太輔とキスしてた…








咲良「この前はどうも//

太輔の幼馴染みの咲良です。」







幼馴染み…








なんで咲良さんがここに居るの？って

思わず太輔を見ると、そ知らぬ顔で

ん？って






咲良「ちょっといいかな。

太輔、向こうで話してくるね」







状況が全く飲み込めない私を

部屋の外へ連れ出した







少し離れたラウンジ








咲良「えっと…名前が…」






「Aです。」








咲良「あ、Aちゃん。

あのね…太輔なんだけど…」







昨日、道で事故にあった太輔






幸いなことに打撲程度の軽い怪我で

もちろん命に別状はない








ただ…頭を強く打って

当時のことをあまり覚えてない







そして、記憶の一部が抜け落ちている









咲良「ごめんなさいね…

太輔が失礼なこと言って。





あなたのことは覚えてないのね。」








まるで私の太輔がって言うみたく





そして勝ち誇ったような表情






でも、どうして咲良さんがここに…









咲良「警察から連絡があったの。

私のところに。」








なんで…








咲良「履歴の一番上にあったからって。」






履歴…なんで







昨日あった太輔からの電話

その後に咲良さんに電話したってこと？







なんで…








咲良「ごめんね。




もしかしたら、太輔が

勘違いさせちゃってたのかな。」







「勘違い？」








咲良「うん。



だって、私太輔と付き合ってるから。」






その言葉に心臓がドクンって音をたてた






でも、私はやっぱり

どこかで覚悟してたんだと思う







『ガヤが女の子と部屋から出てきた』






目の前で重なった２人の影








咲良「彼が思わせ振りなことしてたのかな。

ごめんね。」

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